全 情 報

ID番号 04218
事件名 賃金請求等事件
いわゆる事件名 日本鋼管事件
争点
事案概要  三六協定によっては残業義務は発生しないが、就業規則に残業を命じる規定がある場合には、同規定により労働者は時間外労働義務を負担するとされた事例。
参照法条 労働基準法36条
労働基準法89条
体系項目 労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の義務
裁判年月日 1970年12月28日
裁判所名 横浜地川崎支
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ワ) 271 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集21巻6号1762頁
審級関係
評釈論文 秋田成就・ジュリスト501号153頁/川口実・法学研究〔慶応大学〕44巻6号110頁/有吉保久・地方公務員月報95号56頁
判決理由 〔労働時間-時間外・休日労働-時間外・休日労働の義務〕
 被告会社は原告の所属する前記組合に対し、昭和四二年度第四、四半期(同年一月一日より同年三月三一日まで)における生産計画を提示して協議を重ねた結果、同年一月一日同組合との間に、右期間における時間外労働、休日労働に関する書面による協定が成立し、これにより各課、各係および従業員一人当りの残業時間が決定され接手管係においては通常勤務は拘束八時間、実働七時間であるところ、毎日一時間半の残業を恒常的に行なうことを定めたこと、一方被告会社とA会社製鉄労働組合連合会とが結んだ前記労働協約五一条は「会社は業務の都合上やむを得ない場合は、あらかじめ単組と書面による協定をし、行政庁に届け出て所定就業時間以外に早出、残業、呼出しまたは休日に労働させることができる」と定め、また、被告会社Yの就業規則は右労働協約の定めに従い、その二五条において「業務の都合により、やむを得ない場合は、あらかじめ組合と書面による協定をして、所定就業時間以外に早出、残業、休日出勤または呼出を命ずることがある」と定めていることが認められ、右認定を動かすに足る証拠はない。会社と組合との間に残業に関するいわゆる三六協定が結ばれているからといって、これだけで会社は直ちに個々の労働者に対し、残業を命じ得ると解すべきではないが、本件においては残業に関し、労働協約に従つて定められた前記のような就業規則の規定があり、原告が右規定と異なる労働契約を結んでいたことを認め得る証拠もないから、右就業規則の法規範的効力により、会社は前記協定で定めた範囲内で、原告に対し適法に残業を命じ得るものというべく、これに対し、原告は超過勤務義務を負担し、正当な理由がなければこれを拒否し得ないものといわなければならない。従つて、被告の原告に対する右残業命令は、何ら憲法一八条または労働基準法五条に抵触するものではなく、この点に関する原告の主張は理由がない。