全 情 報

ID番号 04313
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 福知山信用金庫事件
争点
事案概要  始末書不提出を業務命令違反として懲戒の対象とすることはできないとされた事例。
 告示文書に対する妨害行為等を理由とする謹慎処分中ないし処分後の行為につき、「再度減給処分を受けて反省しないとき」という諭旨解雇理由にもとづく解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 始末書不提出
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1968年10月25日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ヨ) 543 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集19巻6号1441頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-始末書不提出〕
 1 前記認定のとおり、申請人らに対し、第二回目の謹慎処分期間終了に際し、就業規則第八六条第三号の規定の始末書の提出命令を下したがこれに従わない事が、結局同規則第九一条第五号に該当するものとの主張は、前認定のとおり、被申請人が提出を求める右始末書の内容が許容され得ない文言を含んでいるため、右条項に該当するとの主張はその理由なく、違法且つ無効である。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 最後に被申請人主張の情状として掲げている点についてであるが、その告示文書は検疎乙第一号証、及び証人A(第二回)の証言によれば、被申請人金庫の労働協約が、昭和四〇年一〇月一日を以て失効後、被申請人のとるべき態度を表明した告示文書であつて、殊更組合を誹謗したり、従業員を過酷に扱うことを内容とするものではなく、むしろ労働条件については旧労働協約の余後効により従前どおりとする等のもので、組合側が右告示文書の上に、「団結」など記載した文書を貼付しなければならない別段の事情も認められず、右行為に対しなされた前記戒告処分は、就業規則上規定する各種の処分には該当しないとしても、実質的に見れば一種の懲戒処分であると見られ、これを右反省の色がないときに該当する一事由として掲上することは二重処分となり許さるべきではないが、右戒告処分を右反省の色がないとする点の単なる情状として考慮することまで否定すべき理由は見当らない。同様に第一回目の謹慎処分についても、その様な処分がなされているのに反覆違法行為に出で処分されたとして、右反省の色がないことの単なる情状として見るのは許容さるべきで、違法とは考えられない。
 以上申請人らの前記行動態様を綜合すると、爾後、申請人らに金融機関の従業員として到底良識ある行動を期待し得ず、将来再び金庫の秩序を破壊し、業務の円滑な遂行を阻害する行為を繰り返す虞れが多分に看取され、結局これらに徴し、将来、前回の謹慎処分に該当する行為に類似した行動態様に出る危険性が明白であると見るのが相当である。
 従つて、被申請人金庫が申請人らを就業規則第九一条第三号(再度減給処分を受けて反省しない時...諭旨解雇処分とする)、第九三条により、申請人らを諭旨解雇処分に付したのは相当であると認めざるを得ない。