全 情 報

ID番号 04314
事件名 分限免職処分無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 奈良県教育委員会事件
争点
事案概要  奈良県職員に対する予算減少を理由とする分限免職処分につき、高年齢順の対象基準を設けたことは公正であるとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
地方公務員法28条1項4号
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1968年10月31日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (行コ) 2 
昭和42年 (行コ) 13 
裁判結果 棄却
出典 行裁例集19巻10号1701頁/訟務月報15巻3号275頁/教職員人事判例6号52頁
審級関係 一審/奈良地/昭42. 1. 9/昭和40年(行ウ)3号
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕
 控訴人は前記のとおり年令等を考慮して対象者を選定し、その結果被控訴人らを免職処分に処したのであるが、右が果たして客観的な基準に基づいて公正に行なわれたかどうかについて検討する。
 個人の能力を年令によつて判断することのできないことはいうまでもないが、本件のような場合過員を解消する方策として高年令順に整理することは、最も一般的な手段方法であり、客観的にも公平な措置であるといわねばならない。また、控訴人が、恩給者または受給資格取得者を整理の対象としたことも適当な配慮であつて、それ自体何ら非難せらるべきことではない。ただ、職業教科の担当者は補充が困難であるとして、対象者の選定から除外したのであるが、前記のとおり、これに先立つ退職の勧奨では教科は何ら関係がなかつたのであり、本件免職処分後にも、一三名の者が英語または数学の教員免許状なくしてそれら教科を受持つているのであつて、これらの事実を考えるときは、控訴人が右のような基準を設けたことは、職業教科の担当者だけに利益を与えるもので、公平を失する処置であるとも解せられなくはないが、前記事実によれば、対象者のうち、被控訴人Y1は最高年令者、同Y2は四番目、同Y3は五番目の高年令者であり、仮に職業教科担当者を除外することなく高年令順に一〇名を選定しても、被控訴人Y3が六番目となるだけであつて(原審証人Aの証言および控訴人の昭和四〇年五月二四日付答弁書の記載等弁論の全趣旨によれば、Bは明治三五年七月一五日生れであることが認められる。)、他の被控訴人らの順位には変更がないのであるから、結局において、被控訴人らを対象者に選定したことは、高年令順を基準とした公正な措置であるといわなければならない。本件免職処分は客観的な基準に基づいて公正に行なわれたものであるということができる。
 被控訴人らは、控訴人は昭和三六年度中に多数の教員を新規採用しているのであつて、本件免職処分は過員を理由とするものではあり得ず、不公正な処分であると主張するが、前記一、三、四の事実に徴するときは、控訴人が昭和三六年度中に多数の教員を新規採用したからといつて、本件免職処分が過員を理由とするものではあり得ないということはできない。被控訴人らの右主張は理由がない。