全 情 報

ID番号 04334
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 学校法人金城高等学校事件
争点
事案概要  公職選挙法違反で起訴された私立学校の教員が就業規則の規定により六カ月の休職処分とされ、公判が係属中であることを理由に六カ月ごとに三回休職を更新されたことにつき、右措置を違法であるとして地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 休職 / 休職期間中の賃金(休職と賃金)
裁判年月日 1967年4月20日
裁判所名 金沢地
裁判形式 決定
事件番号 昭和42年 (ヨ) 74 
裁判結果 認容
出典 時報488号74頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-休職期間中の賃金(休職と賃金)〕
 被申請人の就業規則は刑事訴追を休職事由とし、その期間を「六カ月以内で係争の期間中」と定めているが、右六カ月以内に刑事の係争が解決しない場合、これをいかに扱うべきかについては何らの規定もしてない(規則第一九条、第二〇条)。
 被申請人は右規定を単に「係争の期間中」と解し、「六カ月」は更新又は延長の区切りを示めしたに過ぎず、刑事係争中は繰り返し休職処分をなし得ると主張する。
 然し刑事訴追を理由とする休職処分はそれ自体懲戒でなくとも労働者にとって実質上不利益な処分であることに変りはないから、各処分に関する規定をみだりに緩やかに解釈することは許されない。
 刑事訴追を理由に休職に附された労働者は雇傭関係がありながら就労と賃金の支払を拒否され、然も場合によっては更に懲戒処分をも受けかねない不安定な地位にある。
 してみれば労働者は右休職期間が明示的に限定され早期に右不安定な地位から脱却できることに利益を有する。
 この意味において前記就業規則の「六カ月以内」の規定は労働者にとって一つの保護規定であるから、他に右期間の延長更新の規定もないのに本件の如く休職処分を繰り返すことは許されず、現に存する休職処分は就業規則の解釈適用を誤った無効なものというべきである。
 次に被申請人の就業規則第二四条によれば休職期間が満了し復職できないときは解職されることになっているが、申請人らには復職できない事由は何もない(被申請人から解職の意思表示もない)から、申請人らは既に復職しているので就労と賃金請求の権利がある。