全 情 報

ID番号 04379
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 米子作業株式会社事件
争点
事案概要  解雇された組合三役を交渉委員に加えていることを理由とする使用者の団交拒否につき、組合が団交拒否禁止の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働組合法7条2号
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
裁判年月日 1966年5月19日
裁判所名 鳥取地米子支
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ヨ) 15 
裁判結果 認容
出典 労働民例集17巻3号646頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇と争訟〕
 先ず、A、B、Cの三名が本件解雇により申請人の組合員たる資格をも失つたかどうかの点について考える。組合員資格と従業員資格は本来別個のものであり、両者が相伴うことは必ずしも必要ではないが、本件においては、証人Dの証言によつて成立を認める疏甲第四号証によれば、申請人の組合規約第二条において、「本組合はY会社従業員で組織する。」と規定していることが認められるので、これをいかに解すべきかが問題となる。労働組合規約は、労働組合の社団としての内部組織に関する自主規範たる性質を有し、組合の機関はこれに羈束されるから、規約中に右のような定めがある場合には、組合執行部はもとより、組合員大会においてさえもこれを無視して非従業員を組合員とすることは許されないけれども、組合員が解雇によつて従業員の資格を失つた場合は別途に考える余地がある。けだし、被解雇者が解雇を承認しているときは問題がないとしても、被解雇者が解雇を不当として争つている場合には、まさにそのときこそその者が組合員として組合の保護を受ける最も大きな必要があるわけであるし、労働組合としても、組合員の解雇を不当と判断する場合に、前記のような規約の定めがあるからといつて被解雇者の組合員資格を否定することはいわば自縛行為であつて労働組合の存立目的に反する結果になるからである。従つて、解雇の場合に関しては、前記の組合規約の条項は、組合規約の自主性、内部的規範たる性質に鑑み、合目的的に、解雇の効力に関する争いに結着がつくまでは被解雇者を組合員として扱う趣旨を含むものと解するのが相当である。そうすると、A、B、Cの三名は、前記解雇にかかわらずなお組合員の資格を保有しており、従つて、依然としてAは執行委員長、Bは副委員長、Cは書記長としての地位にあることになる。そして、右の如き組合執行部の役員は職責上当然に組合のために使用者と団体交渉をなす権限を有すると考えられるので、結局、右三名が交渉委員として加わることは、被申請人において団体交渉を拒否する正当の事由にならない。
 次に、A、B、Cの三名が暴動、暴言癖があり、団体交渉を混乱させる危険があるとの点については、証人Eの証言その他本件全証拠によつても右の者にそのような性癖があり、団体交渉に関与させると交渉が混乱に陥る明白な危険があることを認めるに足りない。
 そうすると、結局、被申請人は、何ら正当の理由がないのに申請人に対し、A等被解雇者三名が交渉委員として関与することを理由として団体交渉を拒否するものであつて、申請人の有する団体交渉権を違法に侵害するものといわねばならない。