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ID番号 04511
事件名 解雇処分に対する異議申立却下取消等請求事件
いわゆる事件名 廿日市労基署事件
争点
事案概要  使用者により解雇された労働者が労基署に対し異議申立てたところ却下されたためその取消等を請求した事例。
参照法条 労働基準法104条
体系項目 監督機関(民事) / 監督機関に対する申告と監督義務
裁判年月日 1952年10月29日
裁判所名 広島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和27年 (行) 20 
裁判結果 却下
出典 労働民例集3巻5号449頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔監督機関-監督機関に対する申告と監督義務〕
 先づ被告の当事者能力の存否について考へるに、労働基準監督署は労働基準監督官が行う事務を統括する所謂官署に過ぎず、公法私法上の法律関係の主体たり得ないし、又行政事件訴訟特例法に所謂行政庁とは直接外部に対し国家の行政意思を決定しこれを表示し得る権能を有する行政機関をいうものと解すべきところ労働基準監督署自体は斯様な権能を与えられていないから如何なる訴訟においても当事者となり得る能力を有しないと云う外なく、従つて当事者能力を有しない被告に対して出訴された本訴は訴訟要件を欠く不適法なものとして却下を免れない。
 被告の表示を誤つたものとして被告を労働基準監督署長に変更したとしても請求趣旨(一)については、原告主張の様な異議申立をなし得ることを認めた法令上の根拠はなく仮令労働基準法第百四条にいう申告の趣旨であつてもその申告は労働基準監督官の監督権の発動を促がすに止るので、原告のいわゆる異議申立を被告が却下したとしてもそれは原告の権利義務に直接具体的な法律上の効果を及ぼすものではないからそれを目して行政処分と云い得ず、従つて取消訴訟の対象となり得ないし又請求趣旨(二)については行政庁に対し作為を命ずる裁判を求めるものに外ならず、一般に裁判所が行政事件に関する裁判権をもつているとは云つても裁判所は三権分立の建前上自らその審判権に限界を画すべきものと考へるを相当とし、行政処分が違法かどうかを判断する域を超えて行政庁に作為を命ずることはその限界を逸脱するものであつて許されないと解すべきであるからいづれにしても原告の本訴は不適法なるものと云う外ない。