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ID番号 04577
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 バンク・オブ・インデイア・リミティッド事件
争点
事案概要  銀行の店舗を一時完全に占拠するなど違法な争議行為を指導したとして懲戒解雇された組合執行委員長がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働組合法7条1号
労働組合法8条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1960年12月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ヨ) 5307 
裁判結果 却下
出典 労働民例集11巻6号1427頁/時報252号27頁
審級関係
評釈論文 季刊労働法40号75頁/労働経済旬報473号17頁/労働判例百選〔ジュリスト252号の2〕36頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 前記争議中に「組合」が被申請人の東京支店の店舗を一時完全に占拠し、後には総支配人のAおよび副支配人のBに支店長室への出入を許しはしたもののそれ以外の者の右店舗への立入りを阻止したことはもちろん、右支店の設置された建物にみだりにポスター類を貼りつけたり、旗で時計台をおおい隠したりしたばかりか、被申請人に対して右支店々舗を賃貸中の野村建設工業株式会社の係員の屋内への通行をさまたげるの挙に出たことは、いずれも争議行為の正当な範囲を逸脱したものというべく、これら違法な行為が「組合」の執行委員長である申請人の指導の下に行なわれたことは察知するにかたくないところであり、しかもその結果として被申請人が右店舗の賃貸人より賃貸借契約の更新拒絶を通知されるに至つたにおいては、申請人の負うべき責任がますます重大であることは免れがたいところであつて、被申請人が申請人の昭和三三年八月一四日以来の行動を申請人に対する懲戒解雇の最大の理由に取り上げたことは、まことに当然の措置であるとして是認されるべきであるのみならず、申請人にかねて前出(三)の(イ)ないし(ニ)において認定したような行為があつた以上、被申請人か申請人の在来の勤務態度等をあわせ考えて申請人の懲戒解雇を決意するに至つたのは、万やむを得ないところであつて、もとより「組合」の執行委員長としての申請人の正当な組合活動を理由としたものであるとか、解雇権を濫用したものであるとかいうにあたらないことは明らかである。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 申請人は、被申請人がその従業員を懲戒解雇するについての根拠としての就業規則を制定していないことをもつて、被申請人の申請人に対する懲戒解雇を権利の濫用と解すべきことの根拠の一として主張しているけれども、元来使用者は、その一方的意思表示によつて自由に労働者との労働契約を終了せしめ得る権利を有していることからするときは、申請人の右主張には賛成することができない。