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ID番号 04631
事件名 雇用関係存続確認控訴事件
いわゆる事件名 日本電信電話公社事件
争点
事案概要  電電公社の布設船の乗組員につき、李ライン内の日韓間海底線の障害修理工事のための出航命令に応ずべき労働契約上の義務があるとされ、右出航命令拒否が公労法一七条一項の争議行為禁止規定に該当するとして、拒否指令を出した組合役員の解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
公共企業体等労働関係法17条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
解雇(民事) / 解雇事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1963年6月24日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (ネ) 902 
裁判結果 取消・棄却
出典 労働民例集14巻3号850頁/時報339号19頁/東高民時報14巻6号159頁/タイムズ146号158頁/訟務月報9巻7号840頁
審級関係 上告審/00241/最高三小/昭43.12.24/昭和38年(オ)1098号
評釈論文 横井芳弘・労働法学研究会報549号1頁/河野広・新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕18頁/窪田隼人・日本労働法学会誌〔旧労働法〕22号153頁/三島宗彦・季刊労働法49号137頁/野村平爾・法律時報37巻1号84頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 そして(1)日本電信電話公社法施行法第二条一項によれば、公社法施行(昭和二七年八月一日)の際現に電気通信省の職員である者は、その時において当然公社の職員となる旨の規定があり、(2)また原審証人A(B船甲板員)C(同甲板員)D(同操舵手)E(同乗組員)F(同船長)当審証人G、H、Iの各供述によれば、同人等は何れも公社発足以前からB船に乗組んでいた者か又は他の布設船に乗組んでいて公社発足後にB船に乗組んだ者であることを認め得るから、本件事件当時のB船職員の中古参者を含む相当数は前記施行法の規定によつて公社職員となつたものと推定することができる。(3)成立に争のない乙第五〇号証の一、二によれば、B船の前示航行区域は海員名簿に記載されていることが認められるから、雇入された船員は、特別な事由のない限り、これを知つていたものと推定すべく(船員法三六条参照)、このことは雇入された船員に船員手帳が交付されるが(船員法五〇条)右手帳には航行区域が記載されること(同法施行規則三九条、第一六号書式)からも同様である。(4)原審証人A、Cの供述によれば本件事故発生以前既にB船は本件の場合と同じく所謂「李ライン」を越えた朝鮮沿岸近くにおける海底線修理に一回ならず出航従事している(これらの出航が本来の労働契約の内容に属しない仕事を新たな協定に基いて、B船職員が負担したものでないことは、更に後に説示するとおりである)ことが明らかである。以上(1)ないし(4)の事実と本件修理が前示認定の如く当初から公社の業務範囲に属している事実とを総合して考えれば、本件修理のための航行がB船乗組員の労働契約上の義務を成していることは当時のB船乗組員においてもこれを認めていたものと推認するに十分である。他に以上の認定を覆すに足る十分な証拠はない。
〔解雇-解雇事由-違法争議行為・組合活動〕
 そして(1)前段認定の如く船長Fに公社を代理して団体交渉を為す権限のないことは原審における原告等三名において当然知つていたものと認むべく、(2)前示甲第四号証、同第一七号証の記載、原審証人Aの供述によれば、被控訴人等は、昭和三一年二月二八日所謂協定(但し事実は前段認定の如き内容)がB船分会とF船長との間に成立したことをその直後に知つたものと認め得るに拘らず、以後の団体交渉において斯る協定成立の有効に成立していることを自ら主張した形跡のないことは右甲第四号証の記載及び原審証人J、Kの供述により明らかであり、(3)B船分会に対し被控訴人Y1名義を以て三月四日に発せられた闘争連絡第六号による指令が公社側の業務命令を発する動きに対抗して為されたものであり、また同月五日の同第八号による指令が右六号指令強化のために発せられたものであつて、何れも船長との協定を対象とするものでないことは前示甲第四号証の記載により明らかである。以上(1)乃至(3)の事実を総合すれば、被控訴人等の前示闘争連絡第六号、同第八号による指令は公社の業務命令(出航命令)を対象として為されたものであつて、右闘争連絡が争議行為ではなく、確認書に基く船長の義務の履行についての連絡であるとの主張は到底これを採用することができない。
 従つてこのような指令が公労法第一七条にいう公社の業務の正常なる運営を阻害する行為をそそのかし、あおる行為に該当することは明白である。そして、当時被控訴人Y1は本社支部の支部長、被控訴人Y2は副支部長、被控訴人亡Y3は同書記長として所謂組合三役の地位にあつて以上認定の如き団体交渉の経過を経て本件争議行為を共謀し、これをあおり若しくはそそのかしたものであることは成立に争ない甲第四号証(殊に闘争連絡六号、八号及びこれ等の発せられた事情の記載部分)、乙第四一号証(Lの審尋調書)、乙第四二号証(Y2審尋調書)の記載並びに原審における証人M、同Kの各証言により認められる。従つて控訴人が公社職員たる原審原告等三名を同法第一八条により昭和三一年五月四日解雇したことは適法というべきで右解雇の意思表示のあつたことは原審原告等三名の争はない所であるから同日を以て同人等三名と公社の間の雇用契約は消滅したというべきである。