全 情 報

ID番号 04638
事件名 解雇無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 三井鉱山事件
争点
事案概要  解雇後二年ないし五年の間にわたって解雇の効力を訴訟などで争わなかったこと等により、解雇無効の主張が信義則になし許されないとされた事例。
参照法条 民法1条2項
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇の承認・失効
裁判年月日 1963年9月26日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和32年 (ネ) 325 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集14巻5号1255頁/時報360号41頁/タイムズ154号118頁
審級関係 一審/04539/福岡地大牟田支/昭31.11.29/昭和28年(ワ)109号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇の承認・失効〕
 思うに、解雇は、控訴人等も指摘する如く、使用者の一方的な解除の意思表示に因りその効力を発生し、相手方たる労働者の承認を必要とするものではないから、この意味において、「解雇の承認」なる用語は論理的でない、といい得るかもしれない。しかし、これは、戦後の労働判例において既に慣用せられ、原判決も説く如く、解雇の効力を争うことをやめる旨の意思の表明があつた。という意味においてかかる用語を使用することは、むしろ適当であつて、控訴人等の非難はあたらない。
 本件解雇無効の主張と信義則の適用。
 当裁判所の引用する原判決理由の説示に明かな如く、同判決第一目録記載の者(但しAを除く)については、被控訴人との合意解約に因り有効に雇傭契約が解除され、同第二目録記載の者については、解雇の承認により、同第三目録記載の者については、裁判外の和解に因りそれぞれ本件解雇の効力が確定しているので、右事実に、被解雇者等がこれをなすに至つた経過、及び解雇後、長きは五年、短いものでも、二年乃至三年の長期間に亘つて訴訟その他の手段により会社に対して直接解雇の無効ないし不当を争う態度を示していないことその他同判決認定事実に照せば、仮りに本件解雇について、控訴人等主張のかし(、、)があるとしても、現在に至つてこれが解雇の無効を主張することは民法第一条、労働組合法第二七条第二項等の趣旨に照し、信義則に反する権利の行使というべく、とうてい許されない。控訴人等は、占領下であつたこと、その他当時の情勢が解雇を争うのに不利であつたから、訴訟等による救済手段を採らなかつた旨主張し、次項に掲げた各証拠には、これに副うものがあるけれども、これらの証拠は、後記の理由によりいずれも当裁判所の信用し難いところである。