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ID番号 04666
事件名 雇用契約存続確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 駐留軍用船操舵手事件
争点
事案概要  米駐留軍用船の操舵手として国に雇用されている者が勤務中上長の命令に従わない等適格性を欠くとして解雇された事例。
参照法条 船員法46条
船員法47条
船員法48条
船員法49条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 船員の解雇
裁判年月日 1957年8月6日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (ネ) 2034 
裁判結果 一部変更・棄却
出典 労働民例集8巻4号511頁/東高民時報8巻8号176頁/訟務月報3巻9号31頁
審級関係 一審/04538/東京地/昭31. 9.24/昭和30年(ワ)8910号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-船員の解雇〕
 控訴人は、被控訴人に対し昭和二十九年九月二十日書面をもつて雇入契約解除の申入をしたから雇入契約は翌二十一日終了したと主張するので判断する。前記乙第一号証の一、第二号証、当審証人Aの証言により真正に成立したと認められる乙第一号証の二、三、第三号証(右証言及び弁論の全趣旨によれば、乙第一号証の二の千九百五十四年八月二十五日との日附は同年九月二十五日の誤記であると認められる。)当審証人Bの証言により真正に成立したと認められる乙第八号証、原審証人C、当審証人Aの各証言によれば、前記軍用船BD六〇六九号船長Dは同船の米軍監督者Eと相談の上同年八月三十日頃被控訴人に解雇事由が存する旨係官に上申したこと、人事担当者である船員課長F中尉は上申にかかる解雇事由が存するか否を調査する必要のため被控訴人に対し同年九月二十日下船して予備員として待機するよう命じた書面(乙第三号証)を交付したことが認められる。右認定に反する原審及び当審における被控訴人の供述は措信し難く、その他右事実を覆えすべき証拠はない。右事実によれば、控訴人は書面で雇入契約解除の申入をなしたと認めるに充分であり、本件雇入契約は期間の定のないものであるから、右書面が交付されてから二十四時間を経過した翌二十一日中に解除の申入はその効力を生じ本件雇入契約は終了したといわねばならない。
 被控訴人は、雇入契約解除の申入については船員法第四十六条ないし第四十九条所定の雇止手当、送還手当の支払を要し右義務の履行は解除の申入の効力発生の要件であると主張するが、右法条所定の趣旨は雇入解除の申入をなした際は、成可く速やかに遅滞なく雇止手当、送還手当を支払うべきことを規定したに留まり、これ等の手当の支払を解除の申入の効力発生の要件としたものとして規定したものと解し難いから、この点の被控訴人の主張は採用しない。