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ID番号 04724
事件名 地位保全等仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 前橋信用金庫事件
争点
事案概要  顧客から集金してきた金員の一部(一万円)を着服したとして信用金庫職員が懲戒解雇された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1989年3月16日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ネ) 3635 
裁判結果 取消却下
出典 労経速報1355号12頁/労働判例538号58頁
審級関係 一審/03790/前橋地/昭61.11. 6/昭和60年(ヨ)177号
評釈論文 樋口和彦・労働法律旬報1216号33~34頁1989年5月25日
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 4 以上のとおり、被控訴人が昭和六〇年七月六日A宅で集金した第三八回(昭和六〇年七月分)掛金(現金)一万円については、入金処理がされなかったものであるところ、入金未処理の原因として検討した前記諸点に加えて、右事実判明後被控訴人のとった行動、とくに自ら右未入金分を出捐する一方、あえてAの保管する定期積金証書に加筆訂正して辻褄を合わせるなどの諸点を勘案すると、被控訴人はA宅で集金した右現金一万円を前同日着服して横領したものと認めるのが相当である。
 被控訴人は、原審又は当審における本人尋問において、右入金未処理が過誤による集金不足という単なる事故である旨の供述をしているが、そのとおりであるとすると、右入金未処理は、何らかの原因で被控訴人が集金した掛金のうち一万円が不足し、かつ何らかの原因で担当者の過誤により集金カードがMSSR機に入力されなかったという偶発的事故が重なってはじめて成り立つことになるのであり、その可能性は極めて低いといわなければならないのみならず、前記検討の諸点に照らして被控訴人の右供述は信用することができない。
 そうすると、控訴人が被控訴人には金員着服行為があるものと認定し、右は就業規則四九条一号、三号及び四号(証拠略)に該当するとして被控訴人を解雇処分に付したことについては、その原因があり、かつ信用に立脚する金融機関の性格上やむを得ないもので、もとより有効といわなければならない。