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ID番号 04785
事件名 懲戒免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 大阪府立東豊中高校事件
争点
事案概要  成田空港二期工事反対闘争に参加し逮捕されたこと、それにより約二〇日間勾留され校務運営に多大な障害を与えたこと等を理由とする高校教諭に対する懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 地方公務員法33条
地方公務員法29条1号
地方公務員法29条3号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
裁判年月日 1989年7月6日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行ウ) 29 
裁判結果 棄却
出典 労働判例546号32頁
審級関係 控訴審/05747/大阪高/平 3. 1.25/平成1年(行コ)21号
評釈論文 森晃憲、辻博晃・教育委員会月報470号124~127頁1989年10月
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務外非行〕
 右事実によれば、鉄パイプ等の凶器を手にしてデモ行進の先頭に立ち三里塚交差点付近で警備中の機動隊員に対して暴行をふるった者ら及び第一公園付近において角材を手にして機動隊員に対して暴行をふるった者らに凶器準備集合罪及び公務執行妨害罪の実行共同正犯が成立することは明らかである。そして、前記認定のとおり、原告の参加した一〇・八三里塚大集会において、既に「実力闘争」とか「一〇・二〇空港突入」が謳われ、当日の総決起集会においても「機動隊をせん滅し、空港に突入せよ」とのスローガンが掲げられており、また、デモ行進に先立っては、そもそも政治的意見表明の手段たるデモ行進には不要である鉄パイプ、角材等の凶器が配られたことに照らせば、総決起集会後に行われるデモ行進は、最初から、機動隊の警備に対し鉄パイプ、角材等の凶器を用いて実力で抵抗し、公安委員会に届け出たコースを逸脱して空港に突入することを目的としていたと認められるから、右実行正犯者らは原告ら背後に待機していたデモ参加者らの意思、行為と無関係に突発的犯行に及んだのでないというべきこと、原告は一〇・八三里塚大集会及び当日の総決起集会に参加し、空港突入を図るデモ行進が機動隊の規制を受け、右凶器を所持したデモ参加者らがこれに抵抗し、機動隊員に暴行を振るうことは不可避であると認識、認容しながら、第一公園付近の集団を離脱する意思なくここに待機していたと認められ、これらの事情を総合すれば、原告と、デモ行進の先頭に立って鉄パイプ、角材等の凶器を手にして出発した者ら及び第一公園付近において角材等の凶器を手にして待機していた者らとの間で、明示の意思連絡はともかく黙示のそれは肯定できるというべきであり、これらの者らとの間で凶器準備集合罪、公務執行妨害罪における共謀関係を認めるのが相当である。そうすると、原告が前記のとおり現行犯逮捕され、勾留されたことは、適法である。してみれば、原告の右行為は、たとえ休日ないしは有給休暇期間中になされたとしても、地公法三三条に違反する信用失墜行為に該当するとともに同法二九条一号及び三号に該当するものと認められる。
 4 懲戒権者は、公務員に懲戒事由がある場合、当該公務員を懲戒処分に付すべきかどうか、また、いかなる懲戒処分に付すべきかについては、裁量権を有しており、懲戒権の行使が、その付与された裁量権の目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、当該懲戒処分は適法であると解される。これを本件処分についてみるに、その処分理由は、いやしくも教員たる原告が凶器準備集合罪、公務執行妨害罪を理由として適法に現行犯逮捕、勾留されたことであるところ、かかる原告の行為は、教職の信用を傷つけ、教職全体の不名誉になることは明らかであるから地公法三三条に違反し、しかもその程度は重大であるといわざるを得ないから同法二九条一項所定の「この法律に違反した」程度もまた重大であり、かつ、同条三項所定の「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」の程度も著しいものといわねばならない。そうすると、本件処分が免職処分という重大な結果を生ぜしめることから、その選択に当たっては懲戒権者たる被告に特に慎重な配慮が要請されること、(証拠略)及び弁論の全趣旨から原告が熱心で真面目な国語教師であったと認められることを考慮しても、被告が本件処分をなすに際して、その付与された裁量権の目的を逸脱し、これを濫用したとは認められない。