全 情 報

ID番号 04787
事件名 定年確認等請求事件/占有回収本訴請求事件/建物部分明渡反訴請求事件
いわゆる事件名 工学院大学事件
争点
事案概要  大学の就業規則の改訂による六七歳定年制の新設により、経過措置として七〇歳に達した年度の年度末に定年退職し、その後二年間暫定特別専任教師とされ二年経過により退職扱いとされた者が右就業規則の改訂による定年制新設の効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項本文
労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 定年制
就業規則(民事) / 就業規則の届出
裁判年月日 1989年7月10日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 2300 
昭和61年 (ワ) 5932 
昭和61年 (ワ) 11153 
裁判結果 棄却,一部認容,認容
出典 労働判例543号40頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔就業規則-就業規則の届出〕
 右1認定の事実に照らすと本件規程は就業規則として制定されたものというべきである。なお、本件規程が就業規則として労働基準監督署長に届け出たことを認めるに足りる証拠はないが、労働基準監督署長に届け出られていないからといって本件規程が就業規則として当然に無効となるとは解せない。
〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-定年制〕
 (二) 当事者間に争いのない請求原因1(一)及び2の事実及び前1(二)及び2の事実によると、原告ら被告大学の教授は期間の定めなく被告に雇用され、運用上満七三歳に達した後最初の年度末に辞職すれば足りたところ、本件規程によって、満六七歳(ただし、原告については満七〇歳)に達した後最初の年度末をもって退職とされることとなり、本件規程は、実質的にはその雇用条件を不利益に変更するものということができる。
 しかし、定年制は、その年齢が不当に低い等の事情のないかぎり合理性のある制度であるところ、満六七歳という本件規程による教員の定年年齢は不当に低いものとはいえず(〈証拠略〉によると、昭和四五年に被告が全国二〇〇大学について行った調査では定年制を設けている大学における教授の平均定年年齢は約六七歳であり、昭和五一年に組合が全国七二大学について行った調査によると教員の平均定年年齢は六七・五歳であったことが認められる。)、比較的高齢者について満六七歳という定年年齢を一律に適用することによる急な身分の変動という不利益を避けるため長期間に段階的に定年年齢を引き下げる経過措置が設けられていることなどをも考慮すると、本件規程は、合理的なものであり、有効ということができる。