全 情 報

ID番号 04810
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 兵庫県衛生研究所事件
争点
事案概要  県衛生研究所に日々雇用されてきた職員が右雇用を打ち切られたことを不当労働行為にあたらないとした労委命令の取消を請求した事例。
参照法条 地方公務員法22条2項
地方公務員法22条5項
地方公務員法17条
体系項目 労働契約(民事) / 公務員の採用
解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1989年12月21日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (行ウ) 41 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報1375号135頁/労働判例566号67頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-公務員の採用〕
 原告の図書室における職務内容は、主として何年間も整理されないで滞積していた図書類の整理、図書カードの作成等であったが、同年五月ころその整理はほとんど終了したので、原告は、その後は図書の貸出に伴う業務、新しく入った雑誌の図書カードを作成して台帳に記入する業務、全国の大学、研究室から送られてくる所報の整理、A研究所の所報を研究機関や大学に発送する事務、雑誌の製本を依頼する業務、貸出統計の作成などの業務を行っていた。以上の事実が認められる。
 三1 原告の法的地位について
 (一) 以上認定した事実によれば、原告は、任期を一日としこれが日々更新される職員としてA研究所に採用されたもので、期限付任用の職員である。そして、地方公共団体に労務を提供し、その反対給付として賃金を受ける関係にある者は、たとえ日々雇用職員であっても、地方公務員であるというべきであるから、兵庫県の設置するにA研究所勤務する原告は、地方公務員であり、かつ、地方公務員法三条三項所定の特別職のいずれにもあたらないので、一般職の地方公務員であるというべきである。
 〔中略〕
 一般職の地方公務員については、厳格な要件のもとに期限付任用が認められているいわゆる臨時的任用の職員(地方公務員法二二条二項及び五項)のほかに、期限付任用が許されるか問題があるが、その必要性があり、かつ、そのことが地方公務員の身分を保障することによって公務の能率的な運営等を図ろうとした地方公務員法の趣旨に反しない限り、許されると解するのが相当である。
 本件の場合、A研究所における補助的業務は、A研究所の研究員数の変動、研究数、研究内容の変動等により、その仕事量が増減することが予想されるほか、予算の裏付けを要するものであって、仕事量、予算の増減に対応して適切な人員配置を行うためには、補助的業務に従事する者を期限付任用で採用する必要があると考えられ、また、その職務内容は、前記認定のとおり、培地の作成、器具の洗浄、消毒等といった文字通り補助的な業務であって、特に専門的知識、経験を要したり、また習熟を要するといったものではないから、その任用に期限を付したからといって、A研究所の研究の能率的な運営が阻害されるとは認め難い。
 そうすると、A研究所において補助的業務について日々雇用職員を期限付で任用することは、その必要性があり、かつ、それが研究の能率的な運営を阻害するものとは認められないから、地方公務員法の許容するところであるというべく、従って、期限の定めを無効とし、原告に対する任用を期限のないものと解することはできない。
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 前記認定のとおり、原告は、簡単な面接だけで採用され、勤務時間についても、原告の要望により弾力的扱いがなされるなど、競争試験又は選考(地公法一七条参照)によって採用され、厳格な服務規定に従って勤務する期限の定めのない一般職の職員に比して採用手続等について緩かな取扱いがなされていること、公務員の任用行為は、いわゆる行政処分としての性質を有するものであって、その内容は法律、条例に規定されていて、当事者が自由に定めうるものではなく、当事者の合理的意思解釈を行うことによって、その内容を決する余地がないことにかんがみると、期限付任用を反復継続しても期限の定めのない任用に転化することはないというべきである。
 (二) 従って、一日を任期とし、これが日々更新される日々雇用職員として任用された原告は、あらたな更新(再任)がない限り、任期終了と同時に、当然に公務員としての地位を失うものというべきであるから、A研究所所長のした雇用止めの通告(更新しない旨の通告)が、たとえ裁量権の濫用にあたるとしても、それが不法行為となるのは格別、原告が公務員の地位を失ったことに影響を及ぼさない。