全 情 報

ID番号 04812
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 エッソ石油(住宅ローン)事件
争点
事案概要  使用者が、被解雇者につき財形住宅ローンの償還手続をとり、その結果同人が右住宅の所有権を失うに至ったことが不当労働行為であるとした労委命令の取消を求めた事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1989年12月21日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (行ウ) 42 
裁判結果 認容
出典 労働判例555号39頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 原告は、Yに対し、原告の機構改革に伴う担当業務の変更を命じた業務命令に違反したことを理由に、同五七年六月二四日から七日間の出勤停止処分に付した後、同人がさらにその後も右命令に従わなかったことを理由として、同年七月一四日付で解雇することを決し、同月一三日通告した。それに先立ち原告はこれを、同月一二日A銀行及びサービス会社に通知した。これを受けて同銀行は、同月二三日Yに対し「本件財形住宅ローンの貸付金全額を返済されたい、とりあえず同月二七日までに当月分の約定割賦返済金四万三四三八円を支払われたい」旨通告した。また、原告は、同日Yに対し「本件財形住宅ローンの残高一二一〇万三五八九円を同銀行に一括返済されたい」旨通告した。
 〔中略〕
 補助参加人らは、原告のYに対する本件対応は、Bに対するそれに比較して不合理な差別的対応である旨主張する。なるほど(証拠略)によれば、原告は、昭和五三年一一月一六日、原告の従業員Bが以前在職していたサービス・ステーション部長の地位を利用して、原告のマネージャー・プラン・マネージャーから合計金五〇〇万円を受領したこと等を理由として同人を懲戒解雇したこと、原告は、同日同人に対して退職金金二三五〇万円を支給し、同人にそのうち金七七四万四〇六〇円を右解雇時における同人の住宅融資残高の返済に当てさせたこと、同人はその後原告の代理店株式会社Cに就職していることが認められる。しかしながら、(証拠略)によれば、Bは、同二五年原告に入社以来、広島サービス・ステーション支店支店長、本社サービス・ステーション部次長、同部部長等の要職を歴任し、解雇当時勤続二八年であったこと、さらに(証拠略)(人事規定集)によれば、原告の同五三年度における退職手当金制度につき、本人の責に帰すべき事由により原告から解雇される場合であっても、原告が裁量により退職手当金を支給することがある旨規定されていることが認められる。解雇時までのY、Bの勤続年数及び歴任した役職がいずれも異なっていること、したがって原告における貢献度も差があると推認されることをも併せ考慮すれば、両人に対する原告の対応の差異をもって、不合理な差別と即断できない。してみれば、補助参加人らの右主張も理由がない。