全 情 報

ID番号 04848
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 太陽タクシー事件
争点
事案概要  会社側の事業上の都合による解雇の規定が存在しないときでも、社会通念上解雇を相当とする理由があれば解雇することができるとされた事例。
 反組合派の従業員が争議後に会社に対し、組合員の懐柔工作をしたこと等を理由に金員を要求したことを理由とする解雇が無効とされた事例。
参照法条 民法1条3項
労働基準法20条1項
体系項目 解雇(民事) / 解雇の自由
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務妨害
裁判年月日 1961年12月27日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ヨ) 79 
裁判結果 認容
出典 労働民例集12巻6号1129頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇の自由〕
 しからば、明文はないけれども、この就業規則の解釈として、その解雇が労働者側の原因に基く場合以外の場合(即ち、事業上の都合による場合。)であつても、使用者は、なお、社会通念上解雇を正当とする理由がある場合に限つて、解雇を為し得る趣旨であると解するのを相当とする。(Aタクシーの就業規則)Aタクシー就業規則第二十四条第三号に、申請人等が主張するとおりの規定があることは、当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない疎乙第二号証によると、他に三十日前に予告し、またはこれに代る予告手当を支給して解雇する場合として同規則第二十四条第一、二号、懲戒解雇の場合として同規則第三十二条第一ないし第八号、第三十三条第三号、第二十五条の諸規定がある。ところで、右の第二十四条第三号は「やむを得ない事業上の都合によるとき」は解雇するという抽象的、包括的な解雇基準である。これを、懲戒に関する右第三十二条第八号「其他前各号に準ずる不都合の行為あつたもの」という規定と併せて考えると、本件就業規則の解釈としては、前記Yタクシーの場合と同様、解雇は正当事由のある場合のみに制限し、その正当事由を労働者側の事由によるときと、それ以外の場合(結局使用者側の原因=事業上の都合に帰すると考えられる。)とに分類して積極的に就業規則上の解雇基準として取入れられているものと解される。Yタクシーの場合との相違は、使用者側の原因に基く解雇の正当事由が、「やむを得ない事業上の都合による。」ときという規定で、就業規則上明文化されている点にある。そうして、それが、前記のとおり抽象的、包括的な規定であることにより、使用者側の原因に基く解雇も、解釈上右の解雇基準に該当する場合にのみこれを許し、Yタクシーにおける場合の如く、就業規則上の解雇基準をはなれて、正当事由を求めることは許されないと考えられる。
〔解雇-解雇事由-業務妨害〕
 本件をみると、なるほど、申請人B、同Cは、他の六名と共に、前記認定の如き方法で、法律上これを請求する権利があるとは認め難い金員を要求し、またこれが原因となつて、組合と会社との間に紛争が生じたのであるから、この点のみを考えると、従業員として不適当と判断されても仕方がないようにも考えられる。しかし、更に遡ると、この事件の発端は、そもそも会社側が、従業員の懐柔、労働運動の阻害などの目的に、右申請人等を利用したことにあると考えられ、しかも、(イ)、昭和三十五年八月十日、D屋での交渉妥結後、組合から別段異議の出なかつたAタクシーの関係では直ちに就労できているし、Yタクシーの関係でも、申請人等の就労がおくれたのは、会社側の積極的な拒否に基くものではないこと、(ロ)、前記昭和三十六年三月二日の組合の要求がなかつたならば、本件解雇もなかつたであろうと考えられること、(ハ)、そして、右の組合の要求が為されるに至つた原因の一つには、申請人等の関知しない組合役員買収の件が挙げられていることの諸事実がある。これ等のいきさつから考えると、申請人B、同Cについては、いまだYタクシー就業規則第三十五条第四号に定める解雇基準に該当するものではないと考えるのが相当である。そして、被申請人は、申請人B、同Cと組合員等との感情的対立は融和し得ざるもので、右申請人等を雇傭に止めておくときには、企業内の平和と秩序とを維持できない状態にあつたと主張するが、その主張の趣旨に副う証人E、同Fの供述及び前掲疎乙第四号証の記載によつても、この問題に関して会社側と組合側に全く話合いの余地がなかつたとまでは認め得ないし、またはたしてどの程度の話合いがなされたものか他にこの点の疎明もないのであるから、右の被申請人の主張はこれを認め得ない。従つて、他に、右申請人等を解雇することについての正当事由の存在もこれを認めることができない。次に、Aタクシー就業規則第二十四条第三号の解釈としては、「やむを得ない事業上の都合」とある以上、これを本件にあてはめて考えてみると、申請人Gを解雇することなくしては、職場秩序の維持ができず、業務の円滑な運営が期待できない場合に、はじめて該当すると解される。ところで、前記のとおり、申請人Gは、D屋における協議成立後、直ちに何等の支障もなく就労できたのであつて、会社側としては、昭和三十六年三月二日の合同労働組合の要求がなかつたならば、本件解雇をすることがなかつたであろうことが容易に推測できる。そして、この点に関しても、前記Yタクシーと同一の理由により、会社側と組合側との間に全く話合いの余地がなかつたとまでは認められないし、どの程度の話合いが為されたかについては疎明がないから、結局申請人Gも、Aタクシー就業規則第二十四条第三号に定める解雇基準に該当するものとはいえない。
 以上の理由により、解雇権の濫用の点を判断するまでもなく、本件被申請人等が、申請人等に対して為した各解雇の意思表示は、無効と認められる。