全 情 報

ID番号 04864
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 東京計器事件
争点
事案概要  チェック・オフ協定締結後、組合員各個人から会社にチェック・オフを中止し、すでに控除された組合費相当額を返還するよう求められたのに対し、右の場合はチェック・オフを中止し、チェック・オフにかかわる未払賃金を支払わなければならないとされた事例。
参照法条 労働基準法24条
民法643条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / チェックオフ
裁判年月日 1990年2月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 1740 
裁判結果 一部認容(確定)
出典 労働民例集41巻1号1頁/時報1344号167頁/タイムズ733号97頁/労働判例557号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-チェックオフ〕
 次に、昭和五八年二月及び三月分の賃金請求について考えるに、被告は右賃金相当額をチェックオフ協定に基づいてチェックオフし、これを供託したから右賃金請求権が消滅した旨主張し、被告の主張1(一)のとおり原告らが旧支部組合に加入していたこと、同(三)のとおり被告が旧支部組合との間でチェックオフ協定を締結していたこと、被告がその主張3(三)のとおり供託したことは、当事者間に争いがない。しかし、チェックオフは、各組合員と雇用主との関係においては支払委任たる性格を有するのであるから、各組合員個人が雇用主に対してチェックオフの中止を申し入れた場合には、雇用主は特段の事情のない限りこれに従ってチェックオフを中止しなければならないと解すべきところ、原告X本人尋問の結果とこれにより原本の存在及び成立の認められる甲第一一号証によれば、昭和五七年一二月二二日、原告らを含む支部組合の組合員全員から被告に対し、各個人が記名捺印した書面をもって、A労組のためにその組合費をチェックオフすることを中止し、昭和五六年三月以降のチェックオフされた組合費相当額の金員を返還するよう要求したことが認められる。そうすると、右特段の事情の主張立証のない本件においては、遅くとも昭和五八年一月二〇日に支払期の到来する同月分以降の賃金については、被告は、原告らがA労組の組合員の地位を有したか否かにかかわらず、A労組のためにチェックオフを継続することは許されなかったものといわなければならない。また、仮に被告が支部組合と旧支部組合との同一性を認め、原告らが支部組合に所属しているとして、支部組合のためにその組合費をチェックオフするのであれば、これを受領すべき債権者が支部組合であることは明らかであるから、供託の要件が欠けることになる。さらには、もし旧支部組合と同一性を有するのがA労組か支部組合か、そして原告らがいずれの組合に所属するのかが不明であって、チェックオフすべきかどうか、するとしていずれの組合の組合費についてすべきかが明らかでなかったのであれば、チェックオフそのものをすべきでなかったといわざるを得ない。そうしてみると、結局、被告の供託の主張は、その余の点を判断するまでもなく、失当である。