全 情 報

ID番号 04936
事件名 地位保全等申請事件
いわゆる事件名 八房カントリー倶楽部事件
争点
事案概要  ゴルフ事業本部部長代理に対する懲戒解雇につき、業務命令違反等が理由とされているが権利濫用にあたり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1989年10月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和63年 (ヨ) 2267 
裁判結果 一部認容却下
出典 労働判例550号29頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 五 債務者の右主張につき検討するに、債権者が、A入会勧誘に当たって会員の特典について虚偽の説明をしていたこと、また、同年五月二六日ヘリコプター使用申請書に虚偽の記載をして提出したことは認められないが、債権者はヘリコプター使用申請に当り、申請書の記載を完全にすることなく、債務者代表者の承認印も得ていなかったこと、また、債務者のヘリコプター利用取り扱いの変更に対し反対し従わなかったことは前記一応の認定のとおりである。債権者の右行為は、債務者の主張する就業規則六九条四号及び一〇号の規定に該当するものといえる。
 しかしながら、前記一応の認定のとおり、債権者は、同年五月二六日、今後の営業活動によってAに入会する可能性があるBカントリークラブの正会員であるCの社員の要望に答えてヘリコプターの使用手続きを取ったものであり、事前にD常務の承認を得て、社長室においてファクシミリ送信がなされて航空会社に運行依頼がなされ、右依頼によってゴルフ場に到着したヘリコプターが故障したため、代替機として同社所有のヘリコプターを債権者がチャーターし、その費用は債権者が負担したものであり、また、債務者のヘリコプター利用取り扱いの変更に対し反対する債権者の前記言動は、営業担当者にとっては入会勧誘活動に大きな影響を与えられる取扱いの変更に対して反対する趣旨で前記発言をしたものであるということができるのである。右一応認定される債権者の行為をもって債権者を懲戒解雇処分に付することは、社会通念に照らして合理性に乏しく、使用者の裁量の範囲を越えたものといわざるを得ない。
 したがって、本件懲戒解雇は無効である。