全 情 報

ID番号 04948
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 参議院事務局事件
争点
事案概要  参議院事務局職員の格付けに関する確認の訴えと損害賠償請求につき、任命権者の自由裁量に属するものであり、裁量権の濫用にもあたらないとされた事例。
参照法条 国会職員法25条3項
労働基準法2章
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 1989年11月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (行ウ) 208 
裁判結果 一部却下,一部棄却
出典 労働判例552号50頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 一方、国会職員の職務の等級は、両議院の議長が協議して定める基準に従い決定される(規程一条五項)が、協議決定の一条によると、「国会職員の・・・昇格・・・の基準については・・・・政府職員の例に準ずるもの」とされている。そして、政府職員の職務の等級、昇格等の基準については、人事院規則九-八が定めているが、これによると、職員の職務の等級を決定する基準は、原則として、同規則の別表第二に定める等級別資格基準表に定める必要在級年数又は必要経験年数のいずれかとされている(同規則五条、六条)。すなわち、ある職員が、三等級と決定されるためには、等級別資格基準表の試験欄の区分及び学歴免許等欄の区分に対応して定められている、必要在級年数(例えば、試験区分・上級甲、学歴免許等区分・大学卒の職員の場合は四年)又は必要経験年数(例えば、右の職員の場合は一三年)のいずれかの要件を満たしていることが必要とされている。
 しかし、右の必要在級年数又は必要経験年数のいずれかの要件を満たしていることは、ある職員を昇格をさせる場合に、最低必要とされる資格要件ではあるが、当該職員が右要件を満たしているからといって、当然に昇格する権利ないしは地位を取得することはないというべきである。
 いかなる職員を三等級に昇格させるかは、任命権者が、右資格を有する職員の中から、右の標準的職務内容に照らし、その職員の担当する職務内容が三等級に相応しいものであるか否か、その従前の勤務成績等から判断される当該職員の能力等を総合的に検討して決定するのであって、その決定は、任命権者の自由裁量に委ねられていると解すべきである。
 そして、原告の任命権者が、右の裁量に当たって考慮してはならないことを考慮するなどして、右裁量の範囲を逸脱して原告を三等級に昇格させなかったことを認めるに足りる証拠はない(なお、原告本人尋問の結果中には、参議院の事務局職員中で、三等級に昇格しなかった者はいない旨の部分があるが採用し(ママ)できない。)。
 したがって、その余について判断するまでもなく、原告の被告国に対する請求は失当である。