全 情 報

ID番号 04993
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 西肥自動車事件
争点
事案概要  第三者災害につき被災者に労災保険給付を行なった国が加害者に対して納入の告知を行なったことが時効中断の効力を持つかどうかが争われた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法20条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 国の求償権、示談との関係
裁判年月日 1961年2月27日
裁判所名 長崎地佐世保支
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ワ) 161 
裁判結果 認容
出典 訟務月報7巻5号999頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-国の求償権、示談との関係〕
 本件損害賠償請求権は、民法上の不法行為に基くものであるから、その消滅時効は、同法第七百二十四条所定の三年の期間に従うこととなるが、前認定のような本件事故発生の状況からすると、被害者Aは右事故発生の日である昭和三十一年九月七日に、この事故に基く損害の発生及び加害者が被告会社の被用者Bであることを知つたものと推認することができるから、右消滅時効は同日より進行を始めるものと解するのが相当である。被告はこの時効期間の初日を、原告がAに対し最初の療養補償費の給付をした日の翌日である昭和三十一年十月二十五日として時効を援用しているが、いづれにしても原告が本件損害賠償請求権を取得した後、被告主張の右起算日よりすれば勿論、被告にとつて有利な前記本来の起算日よりしても満三箇年以内である昭和三十四年五月二十六日右請求権について被告にあて納入告知書を発し、之が遅くとも同年六月八日までに被告に到達したことは被告の自認するところ、この納入告知は会計法第三十二条により時効中断の効力を有するものであるから、本件損害賠償請求権についての消滅時効は同日を以て中断されたものというべきである。この点につき、被告は右会計法第三十二条の規定は国の公法上の原因に基く金銭債権についてのみ適用があり本件のような私法上の原因に基くものにまでも適用されると解することは、憲法に違反すると反論するので考えてみるに、原告の取得した本件損害賠償請求権が、訴外Aの被告に対する前認定のそれと同質で私法上の原因に基くものであることは所論のとおりであるが、会計法第三十二条にいう「法令の規定により国がなす納入の告知」とは国が、その歳入の徴収をなすため同法第六条、予算決算及び会計令第二十九条等の諸規定に準拠してする公の手続であつて、明確な形式が定められており、この形式的正確性の故に一般私人のする形式上なんらの制限もない催告とは異なる時効中断の効力を与えているものであると考えられる。