全 情 報

ID番号 04997
事件名 損害賠償並労働者災害補償保険給付金求償金請求控訴事件
いわゆる事件名 日本海新聞社監査役事件
争点
事案概要  監査役を兼ねる使用人の自動車事故による被災につき労災保険の給付がなされたことにつき、国が右事故の加害者に対して求償権を行使した事例。
参照法条 労働者災害補償保険法3条(旧)
労働者災害補償保険法19条(旧)
体系項目 労災補償・労災保険 / 労災保険の適用 / 労働者
労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 国の求償権、示談との関係
裁判年月日 1961年9月22日
裁判所名 広島高松江支
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ネ) 49 
昭和35年 (ネ) 62 
裁判結果 棄却,一部変更・棄却
出典 訟務月報7巻10号1954頁
審級関係 一審/鳥取地米子支/昭35. 3.15/昭和32年(ワ)41号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-労災保険の適用-労働者〕
 控訴人等は、被控訴人Yは監査役の使用人兼任禁止の規定に違反して株式会社A新聞社において監査役と西部総局長および米子支社長を兼任し、給料等の収入を得ていたもので、その収入は正当な業務に基くものではないから、これを基礎にして得べかりし利益を算出するのは不当であると主張するが、監査役が使用人を兼任することの違法であることは前記のとおりであるけれども、だからといつて使用人として得る給料等が不法なものであるとはいえないから、被控訴人Yの使用人としての給料等を基礎として損害賠償額を算定することは何ら不当ではなく、控訴人等の右主張は採用することができない。
 〔中略〕
 被控訴人Yが本件事故当時同社西部総局長兼米子支社長として賃金を得て労働に服していたことは前記のとおりであつて、かように監査役が賃金を得て取締役の指揮監督のもとに労働に従事している限り労災法にいう労働者と解するのが相当であるから、被控訴人Yは労災法上の労働者に当るというべきである。
〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-国の求償権、示談との関係〕
 本件事故の発生につき被控訴人Yにも過失があつたことは前示認定のとおりであるけれども、前記認定の事実によつてはその過失は重大なものとは解しがたく、他に重大な過失があつたことを認めるに足る証拠はない。のみならず労災法第十九条は重大な過失によつて事故を発生させた場合、国において災害補償の全部または一部を支給しないことができるというにとゞまり、その全部を支給した場合重大な過失があるからといつて同法第二十条第一項による求償権の取得を全部または一部制限されるものとは解しがたいから、被控訴人国は右補償金三十三万八千四百九十八円の限度で被控訴人Yの控訴人等に対する損害賠償請求権を取得したものというべきである。