全 情 報

ID番号 05009
事件名 行政処分変更等請求事件
いわゆる事件名 大津労基署長事件
争点
事案概要  労災保険法による休業補償費の算定の根拠となる平均賃金額の決定が監督署長により行なわれたことにつき被災者が右決定の変更を求めて争った事例。
参照法条 労働基準法12条
労働基準法76条
労働者災害補償保険法12条1項(旧)
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 給付基礎日額、平均賃金
裁判年月日 1963年8月5日
裁判所名 大津地
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (行) 2 
裁判結果 却下・棄却
出典 訟務月報9巻9号1110頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-給付基礎日額、平均賃金〕
 前記A工業所においては原告ら自動車運転手が長距離の貨物運送に従事するときは、その距離の長短に応じ前記賃金のほかに現金一、〇〇〇円ないし二、〇〇〇円位を交付していたこと、右現金はほんらい油代、食費、パンク修理費用にあてるための実費として支給していたものであるが、運転手がこれら出費を要しなかつた場合でも返還を要しないこととしていたので右支給現金は一般に手当と呼ばれていたが、前記A工業所はこれを賃金ないしこれと同視すべき手当として支給していたものではなく、同工業所における計理面でも給与項目ではなく一般経費として処理していたことが認められ、右認定に反する証拠はない。してみると右現金の支給分はいわゆる労働の対価として使用者が労働者に支払うものとはいえないので、労働基準法にいう賃金ではないというべく、もとより前記平均賃金に加算さるべきものではない。また前記工業所が昭和三三年九月ごろ、原告に交付した原告の給料計算書(成立に争いない甲第一号証の二)によると「四月度」の原告の本給諸手当として合計金二三、三四五円との記載がある。しかし右甲第一号証の二、前掲乙第三号証の九に証人Bの証言を総合すれば、右金額には同年三月一一日以前における原告に対する未払手当等が加算されていることも考えられるのみでなく、前記計算書(甲第一号証の二)と賃金台帳(乙第三号証の九)とを対比してみると右計算書中の基本賃金額一六、五〇〇円は同年三月一一日から原告が受傷した同年四月一五日までのものを合算した額と解する余地もあるのであつて、右計算書に記載された金二三、三四五円が原告の同年三月一一日から同年四月一〇日まで(四月分)の賃金とはにわかに断定し難く、右金額が四月分の賃金であつたとの原告本人の供述も措信できない。さらに同年二月分及び三月分の原告の賃金が金二三、〇〇〇円または金二四、〇〇〇円であつたとの原告本人の供述も前記乙第三号証の九、証人Bの証言に照らし信用できない。そして他に原告の同年二月一一日から同年四月一〇日までの賃金が被告の査定した前掲平均賃金額を越え原告主張の金額であることを認めるに足る証拠はなく却つて前掲各証拠を総合すれば、被告のした右平均賃金の決定は正当であることがうかゞわれるので原告の第二次的請求も理由がなく失当として棄却すべきである。