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ID番号 05027
事件名 地位保全仮処分申請却下決定抗告申立事件
いわゆる事件名 米駐留軍相模本廠事件
争点
事案概要  駐留軍労働者が解雇されたケースで労働者が右解雇を不当労働行為にあたる解雇であるとして争った事例。
参照法条 労働基準法3条
日本人及びその他の日本国在住者の役務に対する基本契約附属協定69号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 保安解雇
裁判年月日 1958年8月7日
裁判所名 東京高
裁判形式 決定
事件番号 昭和33年 (ラ) 142 
裁判結果 棄却
出典 訟務月報4巻10号1243頁
審級関係 一審/東京地/昭33. 2.10/昭和32年(ヨ)4010号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-保安解雇〕
 抗告人は、本件解雇は、憲法第十九条、第二十一条、第十四条及び労働基準法第三条に違背し無効であると、主張しているので考えるに、駐留軍労務者は、米国軍の役務に従事する特殊の地位を有するものであつて、米国軍と日本政府との間には、「基本契約」並びにこれに附属する数多くの協定が結ばれており、駐留軍労務者は、右契約に基いて、日本国政府に雇傭せられているのであるから、駐留軍労務者は右の「基本契約」及びその附属協定の反射的効果を受けることとなるものというべきである。しかして日本国政府は、既に、「基本契約」第七条において、「米軍契約担当官が、契約者(日本国政府)が提供したある人物を引き続き雇用することが合衆国政府の利益に反すると認める場合には、即時その職を免じ、その雇用を終止する。この契約に従つて契約者(日本国政府)が提供した人物の雇用を終止するために、米軍契約担当官が行う決定は最終的のものとする」ことを契約し、右基本契約の「合衆国政府の利益に反すると認める場合」を、さらに明らかにするため「保安解雇協定」を締結したのであるから、右協定に基いて駐留軍労務者が解雇される場合、米軍側の裁定が最終となることは、まことに已むを得ないところである。しかして右「基本契約」の規定、並びに「保安解雇協定」は、米国軍の安全を守るために已むを得ないものと認められるのであつて、右は日本国の利益とも一致するものというべきである。従つて、右「基本契約」及び「保安解雇協定」が、憲法第十九条、第二十一条、第十四条及び労働基準法第三条の保障を侵害するものとは、いえない。抗告人の引用する諸規定が、米国軍が自己の安全を守るために、労務者の解雇を求める権利を制限するものでないことは、当然のことである。従つて、右「基本契約」並びに「保安解雇協定」に基いてなされた解雇が無効であるとする抗告人の主張は理由がない。