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ID番号 05043
事件名 遺族補償費等不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 相馬労基署長事件
争点
事案概要  農協の支所で勤務する職員が勤務終了後自宅に帰る途中の自動車事故により死亡したケースで、遺族が本件事故は共済保険加入の勧誘に向う途中のものであり、業務上の死亡にあたるとして遺族補償を請求した事例。
参照法条 労働基準法79条
労働者災害補償保険法7条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 通勤途上その他の事由
裁判年月日 1979年9月10日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (行コ) 2 
裁判結果 認容(確定)
出典 労働民例集30巻5号918頁/労働判例328号64頁
審級関係 一審/05176/福島地/昭52. 3.28/昭和50年(行ウ)2号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-通勤途上その他の事由〕
 右認定の事実を総合考察するに、本件事故現場はなるほどAの帰宅の順路上ではあるけれども、同人は、その際、Bを共済に加入させるにつき同女の確約を取り付けるために、同女宅に向けて自動車を運転進行中であったものと認めるのが相当であって、このことは右当日の朝以降同女との間に行われた前示のような交渉の経緯に照らして明らかというべきである。
 三 Aが右のように退勤途上においてB方に立寄り共済加入の勧誘をするについて、予め同人に対し個別具体的な明示の業務命令があったことは、証拠上認められない。しかし、前示認定のとおり、C農協はその全職員に対し共済の募集、勧誘業務を分担させるとともに、勤務時間外における戸別訪問の方法による右業務の遂行を事実上容認していたのみならず、昭和四七年一月二三日には組合長から目標未達成の全職員に対し、同年二月末日の年度末に至るまでの間「各自担当部落に赴き夜間推進を決行し全獲されよ。」と指示したのであって、Aの前記Bに対する勧誘が右組合長の指示に基づき企画されたものであることは、推認に難くない。
 右の組合長の指示の拘束力の有無、程度等については、疑義なしとしないが、前示認定の諸事実のもとにおいては、Aに対して、その適当と認める組合員に対し通常の勤務時間外において共済加入の勧誘のための戸別訪問を実施せよとの趣旨の明示の業務命令があったと同視しうる事情が存したものというべきであり、かかる事情のもとにおいて、退勤後共済加入の勧誘の目的のもとに前記B方に赴く途中生じた本件事故に因るAの死亡は、同女方がAの退勤の順路上にあると否とを問わず、業務上の死亡というを妨げないものと解すべきである。