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ID番号 05050
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 栃木県都市職員共済組合事件
争点
事案概要  交通事故の被災者の逸失利益から地方公務員共済組合法に基づく廃失年金の控除が認められるか否かが争われた事例。
参照法条 地方公務員等共済組合法86条
地方公務員等共済組合法50条
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 慰謝料
裁判年月日 1981年1月20日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ネ) 389 
裁判結果 一部取消・請求棄却
出典 東高民時報32巻1号5頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-慰謝料〕
 被控訴人が、廃疾年金として、昭和五〇年四月一日から同五一年二月二八日までの間に三五八万六二二四円、同年三月一日から同五三年六月三〇日までの間に一九二万九五九二円、同年七月一日から同五五年五月三一日までの間に三二六万〇一〇九円、以上合計八七七万五九二五円を、栃木県都市職員共済組合から支給されて受領していることは、被控訴人において明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。
 ところで、地方公務員等共済組合法に基づく廃疾年金は、一定期間勤務した地方公務員等が、その公務による傷病の結果として、退職の時に廃疾の状態にある場合に、当該公務員本人に対し、右傷病のため受けることのできた利得を喪失したことに対する損失補償及び生活保障を目的とし、かつ、その機能を営むものと解すべきである(最高裁昭和四八年(オ)第八一三号同五〇年一〇月二一日第三小法廷判決・判例時報七九九号三九頁参照)。のみならず、給付事由が第三者の行為によって生じた場合には、当該給付事由に対して行なわれた給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権は給付を行なった組合に移転するし、先に損害賠償がなされれば、その価額の限度で組合は給付をしないことができるのである(同法五〇条)。したがって、本件において、被控訴人が、一方において、控訴人らに対し将来の得べかりし利益の喪失による損害賠償債権を取得し、他方において、廃疾年金の支給を受けることをそのまま是認することは、右法条の精神に反するのみならず、実質的にも同一目的の給付の二重取りを許す結果となって不合理であるから、衡平の観念上、将来の得べかりし利益喪失による損害賠償債権から、廃疾年金給付相当額を控除すべきであるが、将来にわたり継続的に支給されることが確定していても、いまだ現実の給付がなされない以上、将来の給付額を控除すべきものではないから、既に給付された価額に限って、これを控除することとする。(最高裁昭和三八年(オ)第九八七号同四一年四月七日第一小法廷判決・民集二〇巻四号四九九頁及び昭和五二年五月二七日第三小法廷判決・民集三一巻五号四二七頁参照)。