全 情 報

ID番号 05157
事件名 遺族補償費等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 西野田労基署長事件
争点
事案概要  不特定多数の事業場からの求めに応じて工事を施工していたグループの構成員である被災者が、屋上物干し取り付け中に高圧線に触れて死亡し、その遺族が右死亡を業務上の死亡であるとして遺族補償を請求した事例。
参照法条 労働者災害補償保険法1条
労働基準法9条
体系項目 労災補償・労災保険 / 労災保険の適用 / 労働者
裁判年月日 1974年9月6日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (行ウ) 33 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 訟務月報20巻12号84頁
審級関係 控訴審/大阪高/   .  ./昭和49年(行コ)55号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-労災保険の適用-労働者〕
 被災者が死亡当時従事していたA邸文化住宅兼店舗屋上物干場の物干し取付工事は次のとおりなされた。すなわち、被災者(実質的には右グループ)は、その死亡の数日前、B会社から、材料は被災者持ち(ただしB会社手持ちの材料を有償で譲渡する。)代金は金三五、〇〇〇円、との約で、右物干取付工事の注文をうけた。被災者は、材料の鉄骨を持ち帰り、前記訴外株式会社Cの作業場において物干しに組立て、これをB会社の自動車で前記A邸の建物に運んで貰い、グループ構成員の前記訴外Dとともに取付工事に着手したとき、事故にあつて死亡した。右物干し取付工事は、被災者の死後、前記訴外Eらグループ構成員が引継いで完成した。もつとも被災者以外の者については、実際に誰が作業したか、B会社には分らなかつた。右建物工事現場には、B会社の従業員である訴外Fが現場監督としてきていたが、同訴外人は、右建物新築工事を請負つたB会社の責任者として、工事全般を包括的に監督していたのであつて、被災者らの右訴外株式会社C工作所における作業についてなんらの指揮、監督をしなかつたのはもちろん、右建物屋上における右取付工事についても具体的な指示をしたことはない。その他B会社は、被災者らの作業につき、作業時間、作業方法等の労働条件についても指示をしたことはない。右工事完成後、B会社は、約定の工事代金三五、〇〇〇円全額を(他の工事の内金五万円とともに額面金八五、〇〇〇円の小切手一通で)、被災者の妻である原告の代理人として受領に来た前記訴外Eに対して、支払つた。このとき、B会社は、被災者に対して譲渡した材料費および物干しの運送賃を控除すべきであつたが、これを控除しないまま全額を支払つた。
 以上のとおり認められ、(証拠省略)中右認定と牴触する部分は、前記各証拠と対比して採用しがたく、他に右認定をくつがえすに足る証拠はない。
 以上の事実によると、被災者らグループ構成員は、一定の事業所等に拘束されることを好まないところから、一定の事業所等の従業員とならないのはもちろん、特定の事業所等の仕事を専属的、継続的にすることもせず、各人がグループを代表して、不特定多数の事業所等から仕事をさがし、いわば一事業体としてのグループの計算にしたがつて仕事を請負い、グループとして自由な方法で仕事をおこない、仕事が完成するごとにグループ全体として報酬(請負代金)の支払をうけていたのであつて、請負先の事業所等から具体的な作業内容について指揮、監督をうけることもなかつたといえる。被災者が死亡当時従事していたB会社の仕事もこれと異なるものではなく、被災者がグループを代表してB会社から仕事を請負い、被災者の死後においてもB会社の関知しない他のグループ構成員が前記仕事を完成し、グループが、全体として約定の請負代金の支払をうけたものというべきである。
 これによれば、被災者の死亡当時、B会社と被災者との間に支配、従属の関係はなかつたというほかないから、被災者は労働基準法第九条にいう労働者にはあたらない。