全 情 報

ID番号 05199
事件名 公務外認定処分取消請求事件
いわゆる事件名 地公災基金大阪支部長(大阪府税事務所)事件
争点
事案概要  府税事務所で電算処理のためのコード処理等の事務に従事してきた女子職員の頚肩腕症候群につき業務起因性が争われた事例。
参照法条 地方公務員災害補償法26条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1988年7月8日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (行ウ) 27 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ696号116頁/労働判例522号25頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 本件疾病のうちまず頚肩腕症候群についてであるが、キーパンチャー通知の内容が原告主張に係るとおりであることは当事者間に争いがないところ、キーパンチャー通知によれば頚肩腕症候群が公務上の災害と扱われるためには、第一に、その職員が特定業務(前記のとおり、「上肢の動的筋労作又は静的筋労作を主とする業務」)に発症まで六箇月以上継続して従事したことを要するものとされる。この点、前記認定の原告の業務内容によれば、本件疾病発症時である昭和四八年二月九日までの原告の業務については、上肢の動的筋労作としては、布施府税及び南府税納税課管理係における会計機操作が検討の対象となる。しかし布施府税については、当時原告に頚肩腕症候群の発症は全く認められなかったものであり、したがって検討の対象外である。他方南府税納税課管理係についてはその会計機操作期間もほぼ六箇月であり、一応右要件を満たすかのようであるが、原告の業務内容は一般混合事務であり、しかも右特定業務を主たる業務としていたと認めることができないから、結局右要件を充足する事実を欠くことになる。なお仮に第一の要件につき、一般事務である原告主張のボールペン等の複写作業も右要件を満たすものと解しても、前記認定の原告の業務内容、業務量によれば、第二の要件(「その業務量が同種の他の職員と比較して過重である場合又はその業務量に大きな波があること」)を充足する事実を認めるに足りないといわざるを得ない。したがってキーパンチャー通知を基準とする限りは、原告の頚肩腕症候群か原告の業務に起因するものと認めることはできないものである。
 〔中略〕
 (五) 本件疾病については、その原因、機序等が十分解明されていないものであるが、以上の、原告の従事した各業務の作業態様、作業量(作業量については若干の時期的変動があったことは認められるが、具体的な数値としては前記認定以上には明らかでない)、従事期間等を考慮すると、原告の従事した各業務がその発症の一因であることを全く否定することはできないが、前記の同僚の職務内容、健康状態等も併せ考慮するならば、本件疾病の発症については、原告の素因、資質(原告主張の基礎疾病の概念と類似するが、それのみにとどまるものではない)に負うところが、大きいと解される。したがって原告の本件疾病につき、原告の担当してきた業務がその発症、増悪につき相対的に有力な原因であると解するには足りず、原告の本件疾病は公務外の災害である旨認定した本件処分は正当なものといわねばならない(業務と個体の素因等が共働して疾病が発症した場合であっても、業務が有力な原因と認められるときは起因性を認めることができるが、本件はこれに当たらない)。