全 情 報

ID番号 05267
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京教育図書事件
争点
事案概要  組合委員長および副委員長に対する剰員を理由とする整理解雇につき、整理解雇の必要性等の要件を欠いており無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
裁判年月日 1990年4月11日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 平成2年 (ヨ) 2212 
裁判結果 一部認容却下
出典 労働判例562号80頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕
 右一応認定の事実によれば、本件解雇当時債務者の営業収入は減少し営業損失を計上していたものであるが債務者が倒産の危機にあるという切迫性の程度については疎明がなく、同六二年の夏季及び冬季一時金を非組合員には支給していること、希望退職募集の説明の際A取締役が辞任し個人保証を引き上げる意向であることが希望退職募集の一因である旨述べたこと、本件解雇の前後を通じてアルバイト募集を行い本件解雇直後にアルバイト従業員等の採用を行ったこと、本件解雇後に会費等の値上げを実施したこと等の事情に照らすと整理解雇の必要性を認めるには足りず、かつ債務者が整理解雇回避のための努力を十分に行ったということもできない。また、右5の一応認定の事実によれば、債務者は組合に対し希望退職募集や整理解雇についての十分な事前説明を行ったとは言い難い。さらに、被解雇者として債権者らを選定したことに合理性が認められるか否かについてみるに、本件疎明資料によれば本件解雇に際し債権者らを含む従業員について業務上の指揮命令、積極性、協調性等一〇項目を評定項目とする人事考課表が作成され債権者らに対しかなり低い評価が行われていることが一応認められるが、右3に一応認定したとおり債務者が組合結成後組合員に対し過剰な業務命令を発する等の措置をとっていたことに照らすと、債務者の債権者らに対する右各評定項目についての評価が公正かつ客観的に行われたものとは認め難く、本件解雇における被解雇者の選定は合理性を欠くものであるというべきである。
 以上によれば、本件解雇は、整理解雇の必要性を認めるに足りず、解雇回避の努力や解雇についての事前の説明を十分に行ったものとはいえず、被解雇者選定の合理性を欠くものであるから、解雇権の濫用に該当し無効である。