全 情 報

ID番号 05277
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 京都カントリー倶楽部事件
争点
事案概要  ストライキ中のピケッティング等による業務妨害を理由とする組合役員に対する懲戒解雇が無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
裁判年月日 1989年8月7日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 決定
事件番号 昭和63年 (ヨ) 386 
裁判結果 認容
出典 労働判例550号108頁/労経速報1381号26頁
審級関係
評釈論文 市川俊司・労働法律旬報1225号30~32頁1989年10月10日
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 三 そこで、申請人の本件懲戒処分事由の存否について判断する。
 ところで、被申請人が主張するように、被申請人の行っている事業は、ゴルフ場経営というサービス産業で、ゴルフプレヤーに対して快く競技してもらうためのサービスを供給するという特殊な性格があるから、申請人らの本件ストライキ、正門前のピケット等により、単なる労務不提供等によってもたらされる不利益以上に、被申請人に不都合、支障があり、あるいは損害を受けたことは推測されるところではある。
 しかしながら、ストライキは、それに付随して企業側に何らかの支障、損害を被らせることが通常であることに鑑みると、申請人らの本件ストライキが、右特殊性だけから直ちに業務妨害行為に類する重大な違法性を帯びるというわけではなく、結局は、個々の行為の性格、程度、態様等を総合考慮して、被申請人主張の懲戒事由が存在するのか否か、それが本件懲戒処分と均衡がとれているか否かを判断せざるをえない。
 また、疏明によれば、分会は昭和六一年九月二一日に結成され、従来被申請人が有給休暇に対し賃金カットをしていた点の是正などを求めて団交等を繰り返していたが、被申請人側はそれすら満足な回答をしなかったこと、当事者双方は対立を深め、分会側のストライキや赤旗の掲揚等に対し、被申請人側は、団交拒否(赤旗掲揚をやめるなら団交に応じるなどの条件を出す場合を含む。)と懲戒処分の連発で対抗する状態が継続していること、本件ストライキ当時、分会側と被申請人との間では、未だ、昭和六二年度年末一時金、同六三年度夏季一時金、及び同年度賃上げの交渉も未解決の状態であったこと、以上の各事実が一応認められる。そこで、本件で申請人らの行為が懲戒事由に該当するか否かの右判断の際には、右のような申請人らの所属する分会と被申請人との間の過去の労使交渉の経緯などを踏まえて、いわば一連の経過の中で本件懲戒解雇の各事由を評価するという観点も必要となる。 〔中略〕
 以上のとおり、その余の事実について判断するまでもなく、本件各懲戒解雇はいずれも無効であるから、申請人らは被申請人に対しそれぞれ雇用契約上の地位を有し、かかる地位に基づく賃金請求権を有するものと認められ、申請人らの右処分前の賃金は、疏明により、別紙賃金目録(略)のとおりであり、昭和六三年一〇月七日以降、各賃金が支払われていないことが一応認められる。