全 情 報

ID番号 05278
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 善導寺運送事件
争点
事案概要  得意先における積荷方法をめぐるトラブルにより会社の信用を著しく失墜させたとしてなされたトラック運転手に対する解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜
裁判年月日 1989年8月9日
裁判所名 福岡地久留米支
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ヨ) 68 
裁判結果 却下
出典 労働判例544号6頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕
 三 以上の事実によれば、債権者はトマト積み込みに必要なベニヤ板を持たずにA集荷所にトラックを運転して行き、しかも到着から積み込みまで約一時間余りの時間があったのにベニヤ板のないことを債務者会社に連格もせず、そのままベニヤ板を三段目に敷かずにトマトを積み込み、これに対するBの注意に対し「ベニヤ板は持って来ていないけん敷くならそちらで準備してもらわんと。」言い、さらにBの注意に対し、「そんな言い方は何な。」等と喰ってかかったもので、右債権者の言動は積荷を安全、確実、丁寧かつ迅速に輸送するという運送会社の使命に反するものであり、このような言動を顧客の責任者に対してとったことは債務者会社の信用、体面を著るしく失墜させたものであって就業規則四〇条九号及び同一三号に該当するとせざるを得ない。前記認定の事情のもとでの債権者に対する解雇処分は酷ではないかとの疑問も生じないわけではないが、トラック輸送の業務における顧客の会社への信用は、個々の運転手の良好な業務遂行を通じて獲得されるところ、会社は運送中は各運転手の業務の遂行状況を直接監視できないため、会社と運転手との間に信頼関係があって初めて運転手にその業務を任せられるのであり、前記認定の解雇処分に至る事情のもとでは債務者会社の債権者に対する信頼は全く失なわれたものと思料されるのであって本件解雇処分はやむを得ないものとせざるを得ず、他に本件解雇処分が権利の濫用となる事情は認められない。
 四 債権者は本件解雇は債権者が全日本運輸一般労働組合筑後地域支部善導寺運送分会の組合員(分会役員)であることの故をもっての解雇で不当労働行為による解雇で無効である旨主張するが、しかし本件解雇は前記二、三認定の理由によるもので債権者が右組合の組合員であることを嫌悪してなされたものではなく、他に債権者の右主張を一応認めるに足る的確な証拠はない。