全 情 報

ID番号 05327
事件名 労災保険審査決定取消請求事件
いわゆる事件名 兵庫労災保険審査会事件
争点
事案概要  荷役中の荷物の落下により障害をこうむった者が残存障害につき、労基署長がなした障害等級の認定を争った事例。
参照法条 労働者災害補償保険法施行規則別表
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 障害補償(給付)
裁判年月日 1954年3月29日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和27年 (行) 2 
裁判結果 取消
出典 労働民例集5巻2号190頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-障害補償(給付)〕
 本件の争となるところは原告の右に関する障害が等級表の十二級七号にあたるものであるかどうかといふ一点である。
 よつてこの点につき判断するに、
 〔中略〕
 医学上の用語はともかくとして少くとも原告の右膝関節は現在もなお外側に五度廻転の動搖あり、かつ、脛骨を前方へ三粍引出しうる状態となり、そのため長く歩行すると、時に膝関節に脱臼によるような疼痛を感じる場合があり(これは神経症状ではない)、又六貫目以上の重量の負荷には堪え難いことが認められる。このような身体障害は前記等級表の第10級の10号に該当するものと解するのが相当である。というのは、上下肢の関節の機能障害につき同表の定めるところを見るのに、最も程度の重いものを「用を全廃したもの」(同表第一級七、九号、第五級四、五号)と称し、それに次ぐものを「用を廃したもの」(第六級五、六号、第八級の七、八号)といゝ、更にそれに次ぐ程度のものを「著しい障害を残すもの」と指称し、最後に最も程度の軽いものを単に「障害を残すもの」といゝ、その機能障害の程度の如何なるものが右の何れに当るやは明定するところがないが、「全廃」は全然その用をなさない程度のものであり、「用廃」は少くとも運動可能領域の半以上が不可能に帰した場合であり、「著しい障害」はその運動可能領域の半以下四分の一以上の制限を受ける程度のものであり、単なる「障害」とはそれ以下の程度のものと解すべきは、障害の程度を右のように四段階に分つて定めた趣旨と他のこれと同等として定められた身体障害とを対比して自ら諒解できるところであつて、原告の前記身体障害が歩行に際し時々疼痛を感ずることは日常生活に支障を来たすものとみられ、災害時より五年経過後の今日においても右認定の如き状態あることを考慮に入れて判断するときはかゝる障害の程度は前記著しい障害を残す場合の説示に掲げた程度のものと見るのが相当であつて、これを最低級の単に障害を残すものと認定するのは低きに失するものといはねばならない。然らば、被告審査会が原告の本件身体障害を等級表の第一二級の七号に該当するものと判断したのは失当であり、取消さるべきである。