全 情 報

ID番号 05359
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本化薬事件
争点
事案概要  違法争議行為を理由とする懲戒解雇につき、当該指名ストは正当として、組合専従者である従業員の解雇の効力停止の仮処分申請が認容された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1955年10月13日
裁判所名 山口地
裁判形式 判決
事件番号 昭和29年 (ヨ) 131 
裁判結果 申請認容
出典 労働民例集6巻6号916頁
審級関係
評釈論文 季刊労働法19号68頁/労働経済旬報428号22頁/労働判例百選〔ジュリスト252号の2〕118頁/労働法令通信9巻1号19頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 被申請人は本件各事件はいづれも申請人等の一貫した害意により反覆累行された相関的積極的業務妨害戦術であり全般として高度の違法性を有すると主張する。しかしながら既に述べたように、本件各事件のうち、争議行為はすべて賃上要求貫徹のためのものであるから会社に対する加害のみを目的としたものとは認めることはできず、その他の支部乃至申請人等の行為においても申請人等に右のような目的があつたとは考えられない。又前述の通り本件各事件によつて会社の経営が麻痺乃至破壊された事実は全くなく、支部乃至申請人等が火薬工場としての厚狭作業所の危険性を無視した行為に及んだ事実もない。従つて本件における各事件をもつて積極的業務妨害戦術となし得ないこと勿論であり、この点についての被申請人の主張は到底採用し得ない。
 更に被申請人は仮に本件各事件が個々の事件としては軽微であるとしても、これが反覆累行されたものであるから申請人等の行為は全体として懲戒解雇事由に該当する旨主張する。前叙のように支部や申請人等の行為の中には多少行き過ぎや遺憾の点がないではないが、これもそれぞれについて述べたような事情の下で行われたものであり、いづれも軽微でしかも恕すべき点がある上その数も極くわづかに過ぎない。従つて前叙作業所の危険性を考慮に入れても申請人等の支闘委員又は個人としての行為を累計集積することによつてこれを懲戒解雇事由に該当せしめることは失当である。
 第三、解雇の効力。
 前記の通り、結局、申請人等にはいづれも就業規則所定の懲戒解雇事由に該当する事実は存しないのであるから、本件懲戒解雇はいづれも就業規則の適用を誤つたものであつて、その他の争点について判断するまでもなく無効なものといわねばならない。