全 情 報

ID番号 05373
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 札幌中央交通事件
争点
事案概要  組合から除名されたことによるユニオン・ショップ協定に基づく懲戒解雇につき、同協定によっては懲戒解雇をなしえないとして無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / ユニオンショップ協定と解雇
裁判年月日 1964年2月24日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ヨ) 288 
裁判結果 申請認容
出典 労働民例集15巻1号84頁/時報371号60頁
審級関係
評釈論文 正田彬・法学研究〔慶応大学〕37巻11号102頁/前田政宏・ジュリスト326号116頁
判決理由 〔解雇-ユニオンショップ協定と解雇〕
 二、そこで本件懲戒解雇の適否について判断する。
 (一)(イ)
 〔中略〕
 いずれも被申請会社の申請人両名に対する懲戒解雇通知として「申請人が昭和三八年八月三一日附でA労働組合中央支部から除名され、同日附で懲戒解雇の要求があつたので、当社は、同年九月三日附をもつて懲戒解雇する。」という趣旨の記載がある。
 (ロ) 次に、
 〔中略〕
 被申請会社と右組合間の労働協約には、「会社の従業員は、組合員でなければならない。但し、労働組合法第二条第一、二、三、四の各号に該当するものはこの限りでない。」(第三条)、「会社は、組合を脱退したものまたは組合が除名した従業員を組合の通告日より七日以内に解雇しなければならない。」(第五条)と規定されており、これによれば、右協約により右両者間においていわゆるユニオン・ショップ制が設けられ、組合からの除名は、被申請会社について被除名者を解雇すべき義務を発生せしめるものであることが疎明される。
 (ハ) 被申請会社は、右労働協約第五条にいわゆる解雇には、懲戒解雇も含まれると主張するが、懲戒解雇とは、企業内部の秩序、職場規律の維持、管理をはかるため設けられた私法的制裁であり、本件についてみれば、成立に争のない疎甲第二号証(就業規則)の第七条の四所定の各事由に該当する行為があつた場合、その者に対する制裁処分であり、労働者の団結権の擁護を目的とするユニオン・ショップ制による解雇とは制度の本質が異るといわなければならない。そうして、右労働協約第五条がユニオン・ショップ制による使用者の解雇義務を規定したものであることは、前記のとおりであり、これに懲戒解雇の場合が含まれるべきわけがないから、被申請人の上記主張は、失当である。成立に争のない疎乙第一六号証(被申請人代表者の審尋調書)、証人B、Cの各証言中、右趣旨に反する供述は、採用するに足りないし、成立に争のない疎乙第三号証の一、二も右判定を妨げる疎明資料とするに足りない。
 (ニ)
 〔中略〕
 被申請会社は、労働者が組合から除名された場合、これを理由として懲戒解雇をなし得るとの見解を前提として前掲懲戒解雇の意思表示をしたことが疎明され、疎乙第三号証の一、二による各意思表示には右労働協約第五条による解雇の意思表示が包含されていないことが明らかである。そうして、前記(ハ)で述べたところによれば、労働者が組合から除名された場合、その除名の事実自体を理由として懲戒解雇をなしえないというべきであるから、本件懲戒解雇は、その理由を欠き無効のものといわなければならない。