全 情 報

ID番号 05414
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 東邦大学事件
争点
事案概要  校金流金事件の処理につき、理事会の決議に反した行動をとった教授等に対する解雇につき、権利濫用にあたり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1965年6月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和39年 (ヨ) 2120 
裁判結果 申請認容
出典 時報423号51頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 被申請法人の当時の理事長A、常任理事Bらは、前事務局長Cが勝手に他に預託した校金の回収を計り、同人に対する刑事責任追及の徹底、前理事長Dの失脚、Fら提供の不動産に対する担保権実行等の事態を避けるため、顧問弁護士を依頼し、訴訟技術上被申請人が校金預託先であるEに対し債権を有することを主張して、仮処分申請等諸般の訴訟手続をしているのに対し、申請人らは、被申請法人理事会不知の間に前記Cが勝手に他に校金を預託したのは、横領した金員をC個人が預託したものにすぎず被申請人は右預託先に対し預託契約上の債権者たる地位を有するものではないという見解のもとに、前記A理事長らの事態収拾方針及びその実行に対し常に反対の意見を表明し、反対の行動にいでたるものであることを肯認できるのであつて、この対立には以上の如き見解の相違のほか裏面に相当複雑多様な利害関係がからんでいることがうかがい得るとはいえ、すくなくとも表面にあらわれたかぎりでは、申請人らの見解や行動もまた学校法人である被申請法人の利益の擁護という見地から見て一理なしとしない。従つて、申請人らが右見解にもとずいてした批判や異議その他の行動の故に申請人らを理事の地位から罷免することは許されず、まして申請人らが被申請人との間の雇傭契約にもとずいて有する教授、講師の職を解くことは、(たとえ申請人X1の地位が医学部長の地位にあることにより当然に生ずるものであつても)解雇権の乱用として許されないと解すべきである。仮に、各申請人の批判と異議がDの理事としての地位とF及びCの各所有財産との維持に不都合であるとしても、この判断を左右するに足りない。
 従つて、被申請人と各申請人との間の右雇傭契約関係は、昭和三九年一月なされた前記解雇の意思表示に拘らず、なお存続するものというべきであるから、各申請人は右雇傭契約にもとずく教授若しくは講師の地位を依然有するものというべく、また、右意思表示当時の各申請人の毎月の給料額、支給日はいずれも前記第一に記載したとおりであるから、申請人X1は、被申請人に対し昭和三九年一月一日以降昭和四〇年五月末日まで既に期限の到来した給料金一五九万一七一〇円及び昭和四〇年六月一日以降本案判決確定に至るまで毎月二五日限り給料金九万三六三〇円ずつ、また、申請人X2は昭和三九年一月一日以降昭和四〇年五月末日まで既に期限の到来した給料六九万一〇五〇円及び昭和四〇年六月一日以降本案判決確定に至るまで毎月二五日限り給料金四万六五〇円ずつの支払を求める各権利(被申請人に対する被保全権利)をそれぞれ有するものといわなければならない。