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ID番号 05421
事件名 退職手当不足金等請求事件
いわゆる事件名 台湾総督府法院判官事件
争点
事案概要  国家公務員の退職手当請求権は、国家公務員法等退職手当法所定の受給要件を満たす者の退職という事実が発生すれば、他に権利行使について手続上の制約を受けることなく金銭債権として発生するとされた事例。
参照法条 国家公務員退職手当法7条
労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1965年8月19日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (行) 132 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 行裁例集16巻8号1410頁/時報420号15頁/タイムズ181号179頁/訟務月報11巻10号1481頁
審級関係 控訴審/04186/東京高/昭45. 5.29/昭和40年(行コ)39号
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 退職手当法と恩給法や国家公務員共済組合法を対比して考えると、退職手当法による退職手当、恩給法による恩給、国家公務員共済組合法による退職給付はいずれもこれらを受ける権利の存否やその内容はそれぞれの法律の定める要件の充足によつて自動的に定まる点で共通しているけれども、手続的な面からみると、恩給法による恩給や国家公務員共済組合法による退職給付にあつては、これらの法律の定める受給要件を充たす者の退職という事実が発生しても、退職者には行政庁に対し裁定(恩給法第一二条)や支給決定(国家公務員共済組合法第四一条第一項)を求める権利が発生するにとどまり退職者は裁定や支給決定を得た後はじめて受給権を金銭債権として行使しうるに過ぎない(したがつて、もし裁定や支給決定の請求に対し相当の期間を過ぎても応答がないとか請求が拒否されたとかの場合は、これをとらえて抗告訴訟を提記するほかない。)と解されるのに対し、退職手当法による退職手当にあつては、裁定や支給決定のようなことをすべきことが定められていないこと並びに受給権の存否及びその内容が法律上自動的かつ具体的に定まること等からみて、退職手当法所定の受給要件を充たす者の退職という事実が発生すれば、権利行使について右に述べたような手続上の制約を受けることなく金銭債権としての退職手当請求権が発生するものと解される(証人Aの証言および弁論の全趣旨をあわせると、実務上、一般に、退職手当の支給に際しては、支給に先立ち、退職者に対し支給庁において一定金額の退職手当を支給する旨の辞令書を交付する慣行があり、本件の場合も支給庁たる最高裁判所は原告に対する三回にわたる支給に先立ち、いずれも退官の日の翌日たる昭和三六年六月一七日付の辞令書を原告に交付していることが認められるが、これは単なる退職手当支給義務を履行する旨の通知行為とみるべきであり、恩給法による恩給の裁定や国家公務員共済組合法による退職給付の支給決定とは全く性質の異なるものである。)。