全 情 報

ID番号 05431
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 社会保険診療報酬支払基金事件
争点
事案概要  欠勤、無断離席が多く、執務に熱意を欠き、上司の注意にもかかわらずこれを改めないことを理由としてなされた組合役員を歴任している者に対する解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1965年12月9日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ヨ) 2718 
裁判結果 申請却下
出典 労働民例集16巻6号1068頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 (5)以上本件解雇理由の内容などについて検討してきたが、これを綜合すれば、申請人の勤務成績は著しく不良であるものというほかなく、前記他の被処分者に対する処分事由、内容と比較しても、申請人が企業から排除されることは止むを得ないものと結論するのが相当である。申請人代理人は、申請人の欠勤について、大阪基金においては昭和三七年以後年間の欠勤日数が九〇日以内の者については「一年間良好に勤務した場合」として定期昇給が行われることになつており、申請人もこれに該当するものとして毎年昇給を受けているのであつて、勤務成績不良とは云えない旨主張し、そして、証人Aの証言、申請人本人尋問の結果によれば、基金の職員給与規定には定期昇給につき一二ヶ月を良好な成績で勤務した場合は昇給させる旨の規定があり、また、昭和三七、八年当時の大阪基金では組合との間で九〇日以内の欠勤は定期昇給につき差別しない旨の取決めもなされていて、申請人もこれに該当するものとして毎年定期昇給を受け、特に本件解雇前の昭和三八年四月一日にも昇給の対象とされていることが認められるのであるが、しかし、 〔中略〕
 当時大阪基金の場合定期昇給は実際の勤務成績とは関係なく欠勤日数が年間九〇日以内であるか否かにより機械的に決定されていた事情がうかがわれるのであり、従つて、申請人が定期昇給を受けていたことだけから、基金においてはその当時その勤務成績が不良でなかつたと判断していたとするのは妥当でないものと考える。また、申請人が前記の如く昭和三七年七月中旬と同年一〇月頃にB課長に対し暴言を吐き反抗的態度をとつたことについて、その直後基金側において申請人に対し懲戒処分等の措置をとらなかつたことは弁論の全趣旨からみて明かであるが、しかし、本件の場合右定期昇給したこととともにこれをもつて基金側が申請人の行為を宥恕したものとは認め難く、本件解雇に際しては、これらの点をも含めた申請人の長期間にわたる勤務態度につきそれが著しく不良であるとの評価をなしたものとみるのが相当である。
 (七)これを要するに、本件においては、被申請人の反組合的意図の疎明が十分ではなく、他方申請人の勤務成績が著しく不良であつて、それが申請人を企業から排除する理由として十分なものと認められるから、これに申請人が本件解雇を受けるに至つた経過を併せ考えると、本件解雇は、申請人の勤務成績不良を決定的理由としてなされたものと判断するのが相当である。従つて、申請人代理人の前記不当労働行為の主張は採用できない。