全 情 報

ID番号 05432
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 第二平和交通事件
争点
事案概要  懲戒解雇相当の違法行為があったことを理由とする懲戒処分につき、懲戒権の乱用的行使があったとされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1965年12月15日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和40年 (ヨ) 2219 
裁判結果 申請認容
出典 労働民例集16巻6号1105頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 第四次懲戒は、一応前述の新就規五九条五号を根拠としたものと認められるけれども、以下述べる理由により同じく無効というべきである。
 すなわち、(1)新就規は懲戒処分の一種として新たに「停職」を付加規定した点において旧就規と異なるにすぎないものであるところ、右改正(新就規の周知)は、本件仮処分審尋中申請人らにより第三次までの懲戒処分が旧就規上根拠を欠くものとして争われている段階において、しかも第四次懲戒の数日前に至つてなされたものである。(2)会社は、第四次懲戒の処分理由につき、「懲戒解雇相当の違法行為」があつたとして前述就業規則七〇条各号(懲戒解雇該当条項。新、旧同文)を抽象的に挙示するのみで、それ以上の具体的事由については、これを申請人らに告げた事実も認められず、本件審尋においてもその主張がない。(3)もつとも、疎明によれば第三次懲戒以後申請人らが会社の意に反して会社構内に立入り、集会、演説、文書配布等の組合活動を行なつたことが窺われ、前示会社の挙示する就業規則七〇条各号の字句(五「屡々懲戒をうけたのにもかかわらず尚悔悟の見込がないとき」、一〇、「他人に対して危害を加え又は故意にその業務を妨げたとき」、一四、「職務上の指示命令に不当に反抗して事業場の秩序を紊したとき」、二六、「会社施設内で許可なく提示、集会、演説、放送等をなし又は会社の文書提示物等を故意に破棄、隠匿等したとき」、二七、「その他前各号に準ずる行為のあつたとき」)と対比すると、会社の第四次懲戒は、申請人らの右所為をその理由とするものと推察することも、あながち不可能ではない(但し、新就規周知以前の言動を停職処分の対象とすることは、そのこと自体不当である。)(4)なお、新就規は「停職」の期間につき「監察期間」と定めるのみで、監察の基準、機関、手続等についてなんら規定するところがないので停職期間の恣意的な延長に対する保障に欠け、また、同一所為(「懲戒解雇に相当する行為」)に対し上記のような無期限に等しい「停職」と「懲戒解雇」の二種の懲戒を重ねて科するならば、いわゆる二重の危険の批判を招く余地もあるべく、いずれにせよ新就規の「停職」の規定は、その内容において明確妥当なものとはいい難い。
 叙上の諸点に前判示の紛争経緯を考え合わせると、会社の第四次懲戒の真の意図は、第一ないし第三次懲戒を固執維持しこれに対する申請人らの理由ある反対活動を抑圧するにあり、会社において申請人らのうちとくに強硬分子と目するAら七名に対し上記活動の一端をとらえて右懲戒に及んだものであつて、新就規の制定も専ら第一ないし第三次懲戒の不当性を糊塗し第四次懲戒を形式上正当化する目的に出たものと推断するのが相当である。かような意図に出た第四次懲戒は、懲戒権の乱用的行使というべきである。