ID番号 | : | 05433 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 平仙レース事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 病気休職中の女子工員が知人の依頼により、また復職にそなえて身体をならす目的で、約一〇日間、一日二、三時間程度知人の工場を手伝い、一、二〇〇円の謝礼を得たことにつき、就業規則の禁止する二重就職には該当しないとされた事例。 休職期間が過ぎた者または休職期間中であってもその事由が消滅した者は復職させる旨の労働協約に基づき、当然復職したものとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 信義則上の義務・忠実義務 休職 / 休職の終了・満了 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 二重就職・競業避止 |
裁判年月日 | : | 1965年12月16日 |
裁判所名 | : | 浦和地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ヨ) 129 |
裁判結果 | : | 申請一部認容,一部却下 |
出典 | : | 労働民例集16巻6号1113頁/時報438号56頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 窪田隼人・判例評論92号44頁/山口俊夫・新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕34頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-服務規律〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-二重就職・競業避止〕 被申請人は申請人が昭和三八年一一月中A工場に就職し右は就業規則に懲戒解雇事由として定める二重就職に該当するという。 しかし前記認定によれば、申請人は休職期間中近くのA工場の主人のBに手伝いを頼まれ、かつは自らの体を慣らす目的もあつて昭和三八年一〇月下旬頃から一一月上旬頃、約一〇日間一日二、三時間位糸干し、糸繰り等に従事し、その謝礼として金一、二〇〇円を右Bから貰つたものであるところ、就業規則において二重就職が禁止されている趣旨は従業員が、二重就職することによつて会社の企業秩序を乱し、或は従業員の会社に対する労務提供が不能若しくは因難になることを防止するにあると解され、したがつて右規則にいう二重就職とは右に述べたような実質をもつものをいい、会社の企業秩序に影響せず、会社に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度のものは含まれないと解するを相当とするから右認定の就労の目的、期間、労働条件等からみて、該就労は、右規則にいう二重就職にあたらないものと解する。 したがつてこれを懲戒事由とすることはできない。 〔休職-休職の終了・満了〕 以上のとおり申請人の復職申出によつて休職が解かれたものということはできないのであるが、申請人の休職期間は昭和三八年九月一一日より起算し労働協約(旧)第二一条に定める一年の経過をもつて新協約(乙第一号証)第二三条に従い会社は復職させなければならないところ、被申請人は、就業規則第一三条により当然退職したことになると主張する。 〔中略〕 会社は就業規則第一三条をもつて「従業員が次の各号の一に該当するときはその者を退職させ又は解雇する。この場合次の(2)(4)(5)(6)(7)(8)号については三〇日前に予告するか又はこれに代る予告手当を支払う。」と定め、その(8)号事由として「休職期間が満了してその期間の延長とならないときまたは延長された期間が満了してなお就業することが出来ないと会社の指定する医師が診断したとき」と規定していることが明らかであるけれども、休職処分とはある従業員に職務に従事させることが不能であるかもしくは適当でないような事由が生じた場合にその従業員に対し、従業員の地位は現存のまゝ保有させながら執務のみを禁ずる処分であるから休職期間が満了したときに当然復職することが前提となつているというべきであつて前記就業規則第一三条の規定が、休職期間満了の場合にも自動的に退職となることを規定しているとするならば、休職処分の趣旨に反し就業規則に優先するところの労働協約に抵触し、その限度において効力を生じないものというべきである。 よつて被申請人の主張は採用しがたく申請人は労働協約(新)第二三条本文の規定により休職期間の満了に伴い昭和三九年九月一一日より復職したものというべきである。 |