全 情 報

ID番号 05466
事件名 地位保全金員支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 大阪築港運輸事件
争点
事案概要  労基法一九条一項にいう業務上の負傷・疾病の場合の休業には全部休業だけではなく一部休業も含み、この休業期間後三〇日を経過しないでなされた解雇が無効とされた事例。
 労働能力低下を理由とする第二次解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法19条1項
労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
解雇(民事) / 解雇権の濫用
解雇(民事) / 解雇制限(労基法19条) / 休業の意義
裁判年月日 1990年8月31日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成2年 (ヨ) 1118 
裁判結果 申請却下
出典 労働判例570号52頁/労経速報1412号3頁
審級関係
評釈論文 野間賢・労働法律旬報1260号48頁1991年3月25日
判決理由 〔解雇-解雇制限(労基法19条)-休業の意義〕
 第一次解雇の効力
 前示の事実関係によれば、申請人は、本件事故により業務上負傷し、その療養のため休業を余儀なくされていたものであり、平成二年三月末日からは平常勤務していたものの、同年一月二二日から同年三月三〇日まではいわゆる一部休業の状態が続いていたものといえる。
 ところで、労働基準法一九条一項本文は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後三〇日間は解雇してはならない旨を定めているが、右条項にいう「休業」とは、必ずしも全部休業である必要はなく、一部休業でも足りるものと解するのが相当であり(同旨、神戸地方裁判所昭和四七年八月二一日決定、判例時報六九四号一一三頁)、そうすると、第一次解雇は、休業期間後三〇日が経過する以前になされたものであるから、前記条項に反するものとして無効というべきである。
〔解雇-解雇権の濫用〕
〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 ところで、申請人は本件事故により外傷性頚部症候群等の傷害を負い、第二次解雇の時点においても後遺障害を残し、沿岸荷役作業には従事できない状態であったことは前示のとおりであるが、このような労働能力の低下に伴う損害については労災保険の障害補償や民事法上の損害賠償等によって填補されるべき筋合いのものであり、現に後遺障害を有している労働災害の被害者に対する解雇が一切許されないものではない。もっとも、一般論として、労働災害により障害を受けた労働者が就労を再開する場合、使用者としてはいわゆる訓練的・段階的な就労の機会を付与し、労働者の労働能力の回復・向上のための措置を講じることが望ましいことはいうまでもないが、その具体的な方法、程度は、職場環境や職務内容、経済状況等に応じて可能な範囲で決定されるべきものである。本件についても、被申請人は、平成二年一月二二日から同年三月三〇日までの間、申請人に通院治療のための欠勤を許し、申請人の療養の便宜をはかるなどそれなりの配慮をしていたこと、また、被申請人が現場従業員三名の零細な企業で経済的にも行き詰まっており、申請人を重機の運転や軽作業にのみ専従させるなどそれ以上の便宜をはかることが困難な状況にあったこと、さらに、申請人の病状の特質、治療の経過及び復職後の就労状況等からして、申請人は、症状固定の状態に至った後においても安定した労務の提供をなし得る状況にはなかったものといえ、他の従業員との公平の見地からしても、申請人を解雇することにはやむを得ない面があったこと等の諸事情に鑑みると、第二次解雇が権利の濫用に当たるとまでいうことはできず、申請人の解雇権濫用の主張には理由がない(なお、申請人は、重機の主任として職種を限定のうえ被申請人に雇用された旨を主張するが疎明が足りない。)。