全 情 報

ID番号 05472
事件名 地位保全金員支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 極東交通事件
争点
事案概要  経歴詐称を理由とするタクシー運転手に対する解雇につき、はるか過去のタクシー会社勤務の経歴のみを持ち出して適格性を否定することは権利濫用にあたり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇
解雇(民事) / 解雇事由 / 経歴詐称
裁判年月日 1990年9月20日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成1年 (ヨ) 3203 
裁判結果 申請一部認容,一部却下
出典 労働判例572号78頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-経歴詐称〕
〔労働契約-試用期間-本採用拒否・解雇〕
 ところで、本件では、申請人が六五日間の試採用期間の五九日目に業務上の交通事故で負傷し休業中に、当初の試採用期間満了日である平成元年八月九日が経過したため、申請人が本採用になったか否かも争われている。しかし、仮に本件解雇の意思表示が、延長された試採用期間中になされた本採用拒否にあたるとしても、申請人は被申請人会社入社後、試採用期間の九割にあたる期間熱心に働き、平均的乗務員よりも好成績をあげていたところ、業務上の不慮の事故に遭遇し休業のやむなきに至ったというものであるから、採用面接の際説明し了解済みのはるか過去のタクシー会社勤務歴のみを持ち出して申請人の従業員としての適格性を否定し、その本採用を拒否することは合理性を欠き、被申請人の留保解約権の行使は権利の濫用として無効なものというべきである。また、本件解雇の意思表示が、申請人が本採用従業員となってからなされた通常解雇もしくは懲戒解雇の意思表示であるとすれば、右解雇はなおさら合理性を欠き、権利の濫用として無効であると解されるので、いずれにしても、本件解雇は無効である。