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ID番号 05502
事件名 仮処分異議事件
いわゆる事件名 龍神タクシー(異議)事件
争点
事案概要  臨時雇として一年間の雇用期間を定めて雇用されていたタクシー運転手が、他の同様の雇用契約を締結している運転手と異なり、一年の期間満了により雇用契約の更新拒否をされ、地位保全の仮処分を申立てた事件の異議事件。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法21条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1991年1月16日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ウ) 822 
裁判結果 認可
出典 労働判例581号36頁
審級関係 一審/06109/和歌山地田辺支/平 2. 5. 1/平成2年(ヨ)5号
評釈論文 阪本康文、池内清一郎、良原栄三・労働法律旬報1262号51~57頁1991年4月25日/山崎文夫・季刊労働法160号203~204頁1991年8月
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 本件雇用契約は、平成元年一月二二日から平成二年一月二〇日までの期間の定めのあるものであって、これを期間の定めのない雇用契約であると認めることはできないが、右1認定の被申請人における臨時雇運転手にかかる雇用契約の実態に関する諸般の事情(ことに、(4)、(5)の事実)に照らせば、その雇用期間についての実質は期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、申請人において、右契約期間満了後も被申請人が申請人の雇用を継続するものと期待することに合理性を肯認することができるものというべきであり、このような本件雇用契約の実質に鑑みれば、前示の臨時雇運転手制度の趣旨、目的に照らして、従前の取扱いを変更して契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情が存しないかぎり、被申請人において、期間満了を理由として本件雇用契約の更新を拒絶することは、信義則に照らし許されないものと解するのが相当である。〔中略〕
 被申請人は、本件更新拒絶は、被申請人の経営不振の中での人員削減の方針の下で、たまたま最初に雇用期間が満了する申請人に対し行ったものであって、合理的な理由がある旨主張するが、本件全疎明資料によるも、前示の臨時雇運転手制度の趣旨、目的に照らし、従前の取扱いを変更して本件雇用契約の更新を拒絶することが相当と認められるほど被申請人において経営不振に陥り、人員削減の必要に迫られていたものと一応認めるには足りないから、その余の点について判断するまでもなく、右主張は理由がない。