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ID番号 05538
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 富里商事事件
争点
事案概要  ストライキ中にホテル構内で総務部長をとり囲み、ののしりながら他の組合員と共同で体当たりをしたこと、ホテル従業員の入り口で組合員らが総務部長を壁に押しつけて暴行を働いた際に、総務部長の顔面に唾をはきかけたこと等を理由として懲戒解雇された従業員の解雇を不当労働行為であるとした中労委の救済命令の取消請求事件。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働組合法7条1号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1991年5月23日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (行ウ) 119 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報1388号140頁/タイムズ771号150頁/労経速報1437号6頁/労働判例591号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 二 右認定事実によれば、補助参加人Aについて原告就業規則上の懲戒事由が認められる。
 1 右認定事実中1(一)のB総務部長を取り囲んで他の組合員らと共同して行った体当たり行為及び同(二)のC総支配人に対する他の組合員らと共同した暴行行為並びに同(三)のB総務部長に対する唾の吐きかけ行為は、いずれも原告就業規則七二条一項一二号の「他人に暴行を加えたとき」に該当する。
 2 同2の業務遂行中のDに対する暴行行為は原告就業規則七二条一項一二号の「他人に暴行を加えたとき」及び「業務を妨害したとき」に該当する。
 3 同3の営業中のホテルロビーにおいて営業を妨害する意図をもって座込み行為を繰り返し、管理職員に対して罵言を発し、Eを壁際まで押すなどの行為は原告就業規則七二条一項一二号の「業務を妨害したとき」に、また、Fに対する傷害行為は同号の「他人に暴行を加えたとき」に該当する
 4 同4のFの眼鏡のつるに手をかけて外そうとし、同人の後頭部を平手で殴打し、唾を吐きかけた行為は、原告就業規則七二条一項一二号の「他人に暴行を加えたとき」に該当する。
 5 同5のGからのバス発車の指示に従わなかった行為は、原告就業規則七二条一項七号の「職務上の指示、命令に従わず職場の秩序を紊したとき」に、同人の頭部を叩き、故意に足を踏んだ行為は同条一二号の「他人に暴行を加えたとき」に該当する。
 6 同6の女子従業員に対する傷害行為は、原告就業規則七二条一項一二号の「他人に暴行を加えたとき」に該当する。
 三 これらの行為は、それぞれがそれ自体として看過することのできない実力行使であるのみならず、五・五事件、五・六事件にあっては、いずれも営業中のホテル構内で、五・二一事件にあっては、営業中で付近には相当数の宿泊客がソファーに座っていたり、客室に入るためにチェックインの手続をしているホテルロビーやフロント前及びこれに続く客室に向かう階段前の通路で、一〇・一六事件にあっては、人が多数出入りする空港の路上に駐車され原告の送迎業務に当てられているバス付近で、しかもそのバスにはホテルにこれから宿泊する乗務員ら多数が乗車しているところで、それぞれ敢行されたものであって、これらの行為がホテル営業を中心とする原告の業務を甚だしく阻害し、その職場の規律に著しく反し、秩序を乱すものであることは多言を要しない。そして、そのうちの一部が補助参加人組合の活動に際して、あるいはこれに前後して惹起されたものであること、すなわち、五・五事件、五・六事件、五・二一事件が補助参加人組合のストライキの時間中のことであり、一〇・一六事件が事件前に現場にジーパン姿で組合のビラを配っていたHがAの手伝いをしようとしたのをGが見咎めて服装について注意したという経過の後のことであったことは、何ら補助参加人Aの行為を正当化するものではなく、当該行為を組合活動の一環のようにみる余地はない。補助参加人Aがこれら六件もの暴力行為を短期間に累行した以上、たとい五・六事件についてはAにぶつかられたDの方も初めには何らかの対抗的な有形力行使をしたこと、一〇・一六事件についてはGの方が先に腹を立ててAが中にいるのにバスの後部扉を強く閉めたという経緯があったこと、一一・二一事件については原告の業務との関連性のない、個人的な問題に起因するものであると推認されることを考慮してみても、原告がホテル営業に対する脅威と企業秩序維持の観点から、原告との雇用関係を継続し難いと判断して、これを解雇することは同種企業の一般的基準に照らし客観的にみてやむを得ないということができる。そうしてみると、補助参加人ら主張の本件前の原告の不当労働行為の全容を考慮しても、本件解雇が主として補助参加人Aが闘争委員ないし組合員であったことを嫌悪し、あるいは、補助参加人組合の弱体化を図る意図に基づいてなされたものと認めることはできない。