全 情 報

ID番号 05715
事件名 懲戒免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 大阪府教委(池田高校)事件
争点
事案概要  教え子との目立った交際、同人の卒業後の肉体関係等を理由とする妻子ある高校教諭に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。
参照法条 地方公務員法33条
地方公務員法29条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 風紀紊乱
裁判年月日 1990年8月10日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行ウ) 34 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ795号162頁/労働判例572号106頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-風紀紊乱〕
 1 法三三条は、地方公共団体の職員は、住民の信託を受けて、住民全体の奉仕者として公務に従事するものであるところ、職員の行為は、当該職員の信用を左右するのみならず、地方公共団体の行政執行そのものに対する住民の信託、信頼にも大きな影響を与えるとの観点から、職員に対し職責を果たすにふさわしくない行為を禁じたもの(それ故、教員たる者には教育者にふさわしい高度の倫理と厳しい自律心が要求されている)であるから、健全な社会通念に照らし、その職の信用を損ない若しくは職全体の不名誉とみられるような行為である限り、職の内外を問わず、また、犯罪に当たるか否かを問わず、同条に違反するものと解される。
 2 前記認定事実によれば、原告は妻子ある高校教師でありながら教え子であった女子生徒とその在学中から親密な交際を始め、卒業後間もなく肉体関係をもつに至り、A高校の生徒、保護者及び地域住民に動揺を与えたのである。そうすると、原告は社会生活上の倫理はもとより教員に要求される高度の倫理に反し、教員に対する社会の期待と信頼を著しく裏切ったものであり、A高校の生徒をはじめ保護者及び地域住民に与えた不信感は容易に払拭しがたいといわざるをえない。
 したがって、原告は、法三三条が禁じる、その職の信用を傷つけ、職員の職全体の不名誉となるような行為を行ったものというべきである。
 三 本件処分の適否
 前記認定の懲戒事由に該当する原告の行為の性質、態様、影響、右行為の前後における原告の態度などを考慮すると、被告が、所管に属する大阪府下の府立高等学校の教論の任免等を管理執行する立場においてなした本件処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したものと認めることはできない。