全 情 報

ID番号 05738
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 木村技研事件
争点
事案概要  会社代表者が信仰している宗教団体の行事への参加を拒否して解雇された者が、会社の労務提供の拒否を不当として未払い賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法2章
民法536条2項
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権
裁判年月日 1990年12月19日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 6131 
裁判結果 認容
出典 労経速報1421号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権〕
 昭和六一年九月一日に、被告代表者Yは、「A」での宗教活動への参加なくしてする原告の就労を拒否したものと認められ、原告は、被告から解雇されたものと認めるのが相当である。
〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕
 一般的にいえば、理念型としての会社における役員と会社との法律関係は委任契約と解するのを相当とする場合が多いことは確かであるけれども、本件においては、当初の採用時の原被告間の法律関係が雇用契約であることは明らかであるから、問題は、原告が昭和六一年一二月初めに「取締役副社長」という呼称を与えられた時点で、当事者間の法律関係が異なった法的性質のものに変ったとみることが相当であるかどうかという点にあることになる。しかして、〔中略〕原告は、被告代表者の補佐役として、終始、その指揮命令のもとに労務の提供をしていたものであって、労務提供の実態に使用従属関係の認められる状態が継続していたものといわざるを得ず、右の時点で、原被告間の法律関係が雇用契約によるものでなくなったと解することはできない。なお、本件賃金額は、なるほど、当初月額一〇〇万円とかなり高額であり、また、(書証略)によれば、被告会社の給与規定上、当時従業員の「本給」の最高額が五五万八八七〇円と定められていたこと(しかし、右給与規定上の賃金体系は、賃金を「基本給」と「手当」とに分け、更に「基本給」を、「本給」と「加給」に分け、また、「手当」を、「管理職手当」、「職務手当」、「通勤手当」、「家族手当」、「住宅手当」その他の手当に分けている)が認められる。しかし、本件賃金額が賃金規定上の「本給」の最高額を超えているという一事をもって、これを賃金といえないとすることのできないことはいうまでもなく、本件の程度の賃金額は、当該企業の業種、業態、業容と当該従業員の担当業務内容、地位のいかんによっては、あり得る額であって、これをもって原被告間の法律関係が雇用契約の範疇を逸脱するとはいえないのみならず、更に、株主総会等において原告に対する支給額を報酬額として決定したことを窺わせる何らの証拠もない。