全 情 報

ID番号 05758
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 極東交通事件
争点
事案概要  顧客とのトラブルを理由として懲戒休職および格落ち配車の扱いを受けたタクシー運転手が、右懲戒休職および格落ち配車の扱いを不当として損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法709条
労働基準法89条1項9号
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1991年4月23日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 4058 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働判例590号40頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 原告はタクシー運転手として特に落度がないにもかかわらず、乗客のAから運転走行中に故なく突然暴行され、ハンドルをとられる等の事故発生の危険のある状況に追込まれたうえ、本件傷害を負わされたのであるから、自ら一旦下車したAを現場に放置して運行サービスを継続しなかったことには正当な理由があるというべきである。このことは、大阪陸運局長通達が「暴行等の行為があったとき」等の乗客の公序良俗違反行為を乗車拒否の正当理由として認めている(〈証拠略〉)趣旨に照らしても是認することができる(被告は、原告のAに対する右対応が被告の営業成績を大きく悪化させた旨を主張する。しかし、前記のAが被告会社のタクシーを利用しなくなったことを原告の帰責事由に基づく損害ということはできないし、他にこれを認めるに足りる証拠はない)。
 右によれば、原告がAを現場に放置した行為は、実質的に就業規則九二条七項(「外部から指摘を受ける言動を行い、会社の信用を傷つけ、もしくは会社に損害を与えたとき」)に該当しないにもかかわらず、被告は原告に対し、本件懲戒処分を行ったことになるから、同処分は違法というべきである。そうすると、被告は原告に対し、同処分によって原告に生じた損害を賠償する責任がある。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 原告は被告の指名のもとに制度発足時から協同組合のVIP配車乗務員として登録され、平成元年九月から同二年四月上旬まで継続的にVIP配車を受けていたのであるから(〈証拠略〉)、原、被告間には、格別の事情(VIP配車適格性欠如等)のない限り、原告をVIP配車乗務員として扱うとの黙示の合意が成立していたと解するのが相当であるところ、右格別の事情を認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、格落ち配車は右黙示の合意に反し違法であるのみならず、前記一4認定の事実によれば、格落ち配車は実質的に本件懲戒処分の一環としてなされたものと解するのが相当であるから、前記のとおり本件懲戒処分が違法である以上、格落ち配車も違法というべきである。
 よって、被告は原告に対し、格落ち配車によって生じた損害を賠償する責任がある。〔中略〕
 本件懲戒処分等に至るまでの経過は前記一認定のとおりであり、被告は原告から顔面打撲・左肩打撲の傷害を負った旨の診断書の提出を受けており、Aの暴行(傷害)の事実が明白であったにもかかわらず、大阪陸運局長通達の趣旨を無視して本件懲戒処分等を行い、かつ、本件懲戒処分を原告の同僚らに公表したのであるから、原告に対し、多大な精神的苦痛を与えたものというべきであり、これを慰謝するには金一〇万円が相当である。