全 情 報

ID番号 05769
事件名 遺族補償等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 三次労働基準監督署長(坪島産業)事件
争点
事案概要  じん肺管理区分四と認定されていた労働者の突然の死亡につき、業務災害か否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法施行規則35条
労働基準法施行規則別表1の2
労働基準法79条
労働基準法80条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1991年6月27日
裁判所名 広島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (行ウ) 3 
裁判結果 棄却
出典 労働判例593号31頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 原告が妻の亡Aの死亡による遺族補償給付及び葬祭料を請求し得るためには、右死亡が労働基準法七九条、八〇条に規定する「労働者が業務上死亡した場合」に該当することを要する(労災保険法一二条の八第二項)。そして、労働者が疾病により死亡した場合においては、死亡の原因となった疾病が業務上のものであれば、業務上死亡した場合に該当すると解されるところ、労働基準法七五条二項は、業務上の疾病の範囲は、命令で定める旨規定し、これに基づいて同法施行規則三五条、別表(略)第一の二が定められているので、亡Aの死因となった疾病が右別表に掲げられた疾病に該当するか否かについて検討することを要する。しかるに、亡Aが粉じん作業に従事し、じん肺管理区分管理四の決定(症状確認日昭和五五年八月二二日)を受けていたことは当事者間に争いがないから、原告の主張する亡Aの死因となった疾病が、右別表第一の二第五号に規定するじん肺症ないしじん肺法施行規則一条各号に掲げる法定合併症、又は、同表第九号の「業務に起因することの明らかな疾病」と相当因果関係がある場合には、亡Aの死亡は、業務上の死亡と認められることになる。〔中略〕
 亡Aの傍らに三九・一度を示した体温計が発見されたことからすると、亡Aが死亡前、発熱を伴う疾患に罹患したことは推認できるが、これまで検討したとおり、亡Aが肺性心の状態にあったものとは認め難く、また、慢性関節リウマチに罹患していたとの点についても疑問があるばかりでなく、じん肺と慢性関節リウマチとの間の因果関係については、医学的には未だ未解明である。右のとおりであるから、亡Aが原告が主張するような経過をたどって死に至ったものとはにわかに認め難く、結局、じん肺と亡Aの死因との因果関係についての証明はないものといわざるを得ない。