全 情 報

ID番号 05780
事件名 障害補償給付支給に関する処分取消請求事件
いわゆる事件名 直方労働基準監督署長(大和銀行)事件
争点
事案概要  寮母として勤務していた女性が、その際にかかったアレルギー性の症状につき、一四級に該当する障害があるとして労働基準監督署長が行なった障害補償支給処分を争った事例。
参照法条 労働基準法施行規則40条
労働基準法施行規則別表2
労働者災害補償保険法15条
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 障害補償(給付)
裁判年月日 1991年8月8日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (行ウ) 6 
裁判結果 棄却
出典 労働判例594号37頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-障害補償(給付)〕
 神経障害が神経障害に関する障害等級表のいずれの等級に該当するかについては、同等級表の分類からすると、文理上、神経系統の機能に障害があるのかそれとも局部に神経症状を残すものなのか、更に、右障害により、労務に服することに支障を生ずるか否かがその基準となるように解されるが、右障害等級表の分類は、脳、脊髄等の神経系統自体の損傷による重篤な機能障害は必ずしも局部に限定されない上、労働能力に与える影響も大きいのに対し、症状が局部に限定される神経障害は、一般的には、軽度で労働能力に与える影響はより少ないという通例に照らした分類のように考えられること、障害補償給付の目的は労働能力喪失に対する損失てん補にあること、「障害等級認定基準について」(昭和五〇年九月三〇日基発第五六五号労働省労働基準局長通達)別冊「障害等級認定基準」(以下「認定基準」という。)によっても、神経系統の機能障害についての障害等級の認定基準として、局部に症状が限定されるかどうかを厳格な基準として記述してはおらず、むしろ日常生活及び労働に与える支障や程度や、医学的な障害の証明度を主たる基準として第一級から第一二級までを説明していることからすると、被告主張のように、発現部位が局部であるというだけで、いかにその症状によって労働能力に制約を受けたとしても第一二級を超える認定はできないものと断ずるのは相当でない。
 そこで、本件障害についての障害等級の認定に当たっては、残存する症状が発現する部位、当該症状の発現する原因、頻度、強度、持続時間などを考慮し、労働に支障を及ぼす程度を判断して認定すべきであり、特に、本件症状に照らせば、認定基準のうちの神経障害中、頭痛ないし疼痛等感覚異常に関する基準を類推して判断するのが相当と解されるところ、同基準によれば、例えば、右症状が労働には通常差し支えないが、時には労働に差し支える程度の症状が起こるものであれば第一二級の一二に、労働に差し支えないほど軽微であるが、当該部位にほとんど常時、あるいは頻繁に症状を発現するものであれば、第一四級の九に該当するものと解すべきである(認定基準中、頭痛や疼痛等感覚異常に関する説明部分参照)。