全 情 報

ID番号 05803
事件名 損害賠償等請求事件
いわゆる事件名 和商総合ファイナンス事件
争点
事案概要  金融会社の元労働者が使用者の行なった解雇は違法であるとして未払い賃金、および損害賠償を請求したことにつき、使用者が、雇用関係は合意解約されたとして争った事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 退職 / 合意解約
裁判年月日 1991年9月30日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 4288 
裁判結果 棄却
出典 労働判例598号72頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-合意解約〕
 被告会社大阪本部長であったAは、昭和六三年一一月二一日、原告が被告会社宣伝企画室内の女子社員のわき机(共用物)に現金八五万円及び得意先名を書いたメモを入れていたのを発見した。Aは、個人の金銭を会社に持ち込みしかもこれを他人の机に放置するなどということは金融業を営み金銭の取扱に細心の注意を払うべき被告会社の営業部長としてあるまじき行為であるとして、原告を叱責し、同時にこれを東京本社の代表者である被告Yに報告した。被告Yは、Aに対し、右金銭につき原告から釈明を求め、徹底的に事実を究明すべきことを指示し、これを受けたAは原告を糺問した。結局、右金銭は原告個人の所有物であることが明らかになりその日のうちに原告に返還された。
 原告は、疑いをかけられたことに立腹するとともに、自分が会社からよく思われていないと感じ、被告会社を退社することを決意し、翌二三日午前中出社して、Aに対し本件退職願を提出した。
 被告Yは、Aから本件退職願が提出されたとの連絡を受け、原告の真意を確認し併せて原告退社後の大阪本社の営業形態等を打ち合わせるためB常務を伴って大阪本社に向かい、夕方到着して原告に会った。原告は、被告Yに対し、「会社は自分に冷たい。自分を疑っている。」等を言い立て、業務を引き継ぐ段取もすることなく退社し、以後出社しなくなった。
 その後、被告会社では、原告に退職金を支払うことになり、会計事務所と相談のうえ、その額を金一〇二万六〇〇〇円と決定し、同年一一月二八日原告を被告会社に呼び、Aが、雇用保険の離職表等の手続を取るのと併せて退職金を原告に手渡した。原告は、右額が少なすぎるとしてこれを突き返した。〔中略〕
 しかし、原告が、右時点で解雇の無効を主張していたのならともかく、単に退職金額に不満を唱えていたにすぎない(原告)ことからすると、被告会社が右手段を弄してまで本件退職願を提出させたとは考えられないこと及び1で掲記した各証拠に照らすと、原告の右供述は到底措信できない。
 以上によると、原、被告間の雇用契約は、昭和六三年一一月二二日、合意解約により終了したものと認めるのが相当である。