全 情 報

ID番号 05804
事件名 地位保全仮処分申立事件
いわゆる事件名 京都相互タクシー事件
争点
事案概要  タクシー会社の管理職(営業部長)であった被用者が、守衛部門に配置転換され、その一カ月後に解雇され、賃金の仮払い、地位保全の仮処分を申立てた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1991年10月1日
裁判所名 京都地
裁判形式 決定
事件番号 平成3年 (ヨ) 740 
裁判結果 認容(保全異議申立)
出典 タイムズ771号135頁/労働判例602号64頁/労経速報1461号19頁
審級関係
評釈論文 藤原稔弘・季刊労働法164号215~218頁1992年8月
判決理由 〔解雇-解雇権の濫用〕
 期間の定めのない雇用契約における普通解雇といえども、解雇権を濫用してまでこれを自由に行うことは許されないのであって、当該具体的事情のもとにおいて解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できないような普通解雇は無効と解すべきことは、既に確定した判例法理である。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 前記認定事実に照らせば、債権者は、当初から債務者会社の幹部職員として雇用されたことがあきらかである。このような被傭者は、通常、かなり様々な業務に就き、使用者の都合により配置転換を受けることが一般的に予定されているということができる。しかし、突然発令された本件配転命令により債権者が就労を命ぜられた守衛長という新職場は、旧職場たる営業部長職とは著しくかけ離れたものである。このような唐突な配置転換も全く許されないわけではないけれども(債務者会社就業規則一五条も職種変更を伴う配転命令を一般的に予定している)、それが止むをえないとして是認される理由が認められない場合には業務命令権の濫用となる余地が大きいということができる。ただ、現実に旧職場とは著しく異なる新職場への配転が命ぜられ、使用者において被傭者の旧職場での就労を拒む場合には、被傭者が現実に就労すべきところは新職場しかなくなるわけであるから、被傭者は旧職場の業務を行う義務を負わないと理解するほかない。
 これを本件についていうと、コンピューターによる給与計算業務は、債権者にとっては旧職場での業務であるから、本件配転命令後は、債権者はこれを行うべき雇用契約上の義務を負わないというべきである。したがって、債権者が本件配転命令の後、コンピューターによる給与計算業務を行わなかったことは、何ら解雇の理由となるものではない。