全 情 報

ID番号 05841
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 安田火災海上保険事件
争点
事案概要  代理店の研修生が第一次研修期間終了後、第二次研修期間の研修生として再採用されなかったのに対して、地位確認等を求めた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇
裁判年月日 1992年1月14日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 23 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1449号3頁/労働判例604号17頁
審級関係
評釈論文 藤川久昭・ジュリスト1013号147~150頁1992年12月1日
判決理由 〔労働契約-試用期間-法的性質〕
 代理店研修生の二年間は、連続かつ一貫した教育課程が組まれ、二年間を通して被告の各営業店に配属され、特定の担当者の下で、現場の保険募集業務を中心に指導を受けることになっていること、給与体系も、各考課毎に漸増する一貫したものになっていることなどからみて、本件研修期間は、二年間を通して一個の連続した雇用契約であり、ただ、各研修期間満了時点において、それぞれ解約権が留保されているものと解するのが相当である。したがって、本件雇用契約が各研修期間の満了により終了するためには、留保解約権の行使(再採用の拒否)が許される場合でなければならないと解すべきである。
 そして、このような解約権留保付雇用契約における解約権の行使は、通常の雇用契約における解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきであるが、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認される場合でなければならないと解すべきである。
〔労働契約-試用期間-本採用拒否・解雇〕
 前記のような、原告の職務上の義務不順守(内規違反)と、一連の勤務態度不良(勤務懈怠、不誠実)、特に上司から何度も注意を受けながら、態度が一向に改善されなかったことは、就業規則上の研修生の義務(就業規則を守り、所属長の指示に従い、会社の秩序を保持し、互いに人格を尊重して誠実に研修すべき義務)に違反するものであり、原告の成績面(被告においては最も重視している)における条件達成の事実を考慮しても、なお、被告が原告の適格性欠如を理由に再採用を拒否したこと、即ち、原告に対し、解約権を行使したことには、解約権留保の趣旨、目的(研修生の適格性の判断)に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認めることができる。
 そうすると、原・被告間の雇用契約は、被告の適法な解約権の行使により第一次研修期間の満了時である昭和六三年五月三一日をもって終了したものというべきである。